【保存版】電気工事DIY インバーター蛍光灯のLED化改造工事

インバーター蛍光灯の全体 diy

以前の記事で、第二種電気工事士の筆記試験および技能試験を独学・低コストで突破した記録を公開しました(筆記試験対策編/技能試験対策編)。今回は、取得した免状をフル活用して自宅の設備をアップデートする「実践DIY編」です。

テーマは「インバータ式蛍光灯のLED化(AC100V直結バイパス工事)」です。

蛍光灯のLED化には、既存の器具の方式(グロースタータ式、ラピッドスタート式、インバータ式)に応じた正しいアプローチが必要です(※蛍光灯の種別見分け方とLED化の選択肢に関する体系的な知識については、別記事の「理論・知識整理編」にて詳しく解説しています)。

本記事ではその実践例として、キッチンの電動昇降式キャビネットに内蔵された「インバータ式蛍光灯」をターゲットに、劣化したインバータ基板を回路から完全に切り離し、AC100Vを直接LEDへ供給するバイパス手術の全工程を記録しました。

praxis
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せっかく取った電気工事士の免状や。ペーパードライバーのまま眠らせておくのはもったいないから、キッチン照明をハックしていくで。

Logico
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インバータ式の器具に「工事不要」を謳うLED管をそのまま挿すのは、発煙や火災のリスクが伴う悪手です。根本から回路を改修するアプローチ、しっかり解説していきましょう。

第1章:【警告】法的要件と安全措置のロジック

具体的な分解・改修手順に入る前に、本作業における極めて重要な前提条件を2点明記しておきます。「なぜそのルールが存在するのか」という物理的・電気的な根拠を理解することが、事故を防ぐ最大の防御策となります。

【重要】本工事における必須条件

  • 法的要件: 本作業(器具内の安定器・インバータバイパス配線)には「第二種電気工事士」以上の資格が必須です。無資格での施工は法令違反となります。
  • 安全措置: 作業前には必ず対象回路の「ブレーカー(配線用遮断器)」を遮断し、無電圧を確認してから着手してください。

1-1. なぜ「電気工事士」の資格が必要なのか?

照明器具内の安定器(インバータ)を切り離し、AC100Vの電源線を直接結線し直す作業は、電気工事士法が定める「一般用電気工作物の作業」に該当します。

商用電源(AC100V)を扱う際、不適切な部材選定や甘い結線を行うと、接続部で「接触抵抗」が増大します。そこに電流が流れ続けるとジュール熱が発生し、周囲の絶縁被覆や樹脂パーツを溶融させ、最悪の場合はアーク放電やトラッキング現象による火災に直結します。「許容電流の計算」「電線の種類に応じた圧着・接続手法の選択」「確実な絶縁保護」を物理法則に基づいて自己完結できる技術が求められるため、国家資格による制限が設けられています。

1-2. なぜ「壁スイッチOFF」ではなく「ブレーカー遮断」なのか?

「手元の照明スイッチを切ったから電気が来ていないはず」という思い込みは命取りになります。理由は以下の2点です。

  • 逆接続(N側スイッチ)のリスク: 本来、片切スイッチは非接地側(L:黒線)に設けますが、古い住宅や過去の施工不良により接地側(N:白線)にスイッチが組まれているケースが存在します。この場合、スイッチをOFFにしても器具の内部まで常に対地電圧100Vがかかり続けており、シャーシやアースに触れた瞬間に感電します。
  • 制御基板への常時給電: 今回扱う電動昇降キャビネットのように、マイコンやリレー、センサーを搭載した機器は、待機電力を維持するためにスイッチのON/OFFに関わらず制御基板まで常時AC100Vが給電されています。

通電状態でニッパーを入れれば、刃先でLとNが短絡(ショート)し、激しいアーク火花とともに工具が溶け、火傷や網膜損傷を負います。作業時は必ず分電盤のブレーカーを落としてください。

第2章:対象機器の調査と分解|結線図から構造を読み解く

今回改修するのは、ノーリツ(NORITZ)製の電動式垂直昇降アッパーキャビネット「パワーコンテナ(KSUS-0901)」に組み込まれた照明設備です。まずは銘板と結線図から電気設備の素性を洗い出し、理解します。

ノーリツ KSUS-0901 銘板
本体銘板:定格電圧100V、使用ランプはFL20SS/18(20W形直管蛍光灯)であることが確認できる。
内部の結線図M
庫内に貼付された結線図M:制御基板のCN1からインバータ基板へ給電されるルートが明記されている。

2-1. 結線図の解析とバイパス戦略の立案

本体内部の「結線図M」を追うと、電気の流れは以下のようになっています。

  1. 商用電源(AC100V)から端子台・ノイズフィルターを経由し、メインの「制御基板(CN2)」へ入力される。
  2. 手元の操作スイッチ基板(CN6/CN7)からの信号を受け、制御基板上の「CN1」から照明用の電力が出力される。
  3. CN1の出力が「インバータ基板」へ入り、高周波・高電圧に変換されて「蛍光管」を点灯させる。

つまり、制御基板の「CN1」から出ている配線をインバータ基板の手前でカットし、蛍光灯ソケットへ向かう配線と直結してしまえば、手元スイッチのON/OFF制御をそのまま活かした状態でインバータだけを完全にパージ(排除)できるという仮説が成り立ちます。

キャビネット内部の昇降機構と電装ボックス
キャビネット上部のカバーを開けた様子。昇降用のベルトとモーターの下に、灰色の金属製電装ボックスが鎮座している。

第3章:基板解析|本当にAC100Vが出力されているのか?

仮説を検証するため、中央奥にある金属製の電装ボックスを取り外して内部の基板を確認します。

電装ボックス内部の制御基板とインバータ基板
電装ボックス内部:左の緑色がメイン制御基板、右端の茶色い細長い基板がインバータ回路。
インバータ入出力配線をカットした基板
インバータ基板へ繋がる赤ソケット(CN1入力)と白ソケット(照明側出力)の配線をカットし、インバーター回路をバイパスした状態。

3-1. スイッチング素子「BT137」の正体

ここで一つ疑問が浮かびました。制御基板上の赤ソケット(CN1)の手前を追っていくと、放熱板(ヒートシンク)が付いた3本足の半導体素子「BT137」を介して給電されていることが判明したのです。

基盤の図解・電流の流れ
praxis
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ちょっと待てよ。TO-220パッケージの3本足ってことは、3端子レギュレータか?もしここでDCに降圧・変圧されとったら、AC100V用のLEDを繋いでも点灯せえへんぞ……。

Logico
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鋭い観察眼ですが、安心してください。「BT137」のデータシートを引くと、これは3端子レギュレータではなく「トライアック(双方向サイリスタ)」です。

トライアックとは、ゲート端子に微小な制御信号が入ると主端子間の交流(AC)電流をそのまま導通(ON)させる無接点スイッチング素子です。機械的なリレー(カチカチと音が鳴る部品)の代わりに、電子的にAC100VのON/OFFを制御するために実装されています。

つまり、赤ソケット(CN1)には変圧された直流ではなく、スイッチON時に純粋な「AC100V(50/60Hz)」がそのまま出力されているという確固たる裏付けが取れました。

3-2. 元の配線(0.75sq撚り線)と新規配線(0.5sq VSF)の物理的考察

インバータ基板から蛍光灯ソケットへ向かっていた元の白黒ケーブルを観察すると、0.75sq程度のしっかりした被覆の「撚り線」が使われていました。一方で、今回私がソケット側の引き直しに用意したのは「0.5sqのVSF線(単心ビニルコード)」です。

ここで「元のインバータ回路はなぜこの配線材を選定していたのか?そして、0.5sqへ変更しても問題ないのか?」を整理しておきます。

比較項目 元のインバータ二次側回路 改修後のLED直結回路
駆動電圧 始動時(LC共振時)に約1,000V前後の高圧パルスが発生 常時AC100V(商用電源そのまま)
駆動周波数 数万Hz(40kHz〜100kHz)の高周波交流 50Hz / 60Hzの商用周波数
表皮効果の影響 高周波のため電流が導体表面に集中する「表皮効果」が顕著。表面積を稼ぐため撚り線が必須 商用周波数のため表皮効果は無視できるレベル
消費電力・電流 約18W〜20W(約0.2A) 9W(約0.09A)
要求される電線仕様 高圧パルスに耐える厚い絶縁被覆+高周波抵抗を下げる0.75sq撚り線 0.5sq VSF線(定格300V・許容電流約5A)で50倍以上の安全マージン

元の回路が0.75sqの特殊な撚り線を採用していたのは、インバータ特有の「始動時の高電圧パルスへの耐圧」と「高周波駆動による表皮効果の回避」という、物理的に極めて理にかなった設計だったからです。そして、インバータをバイパスして高圧・高周波の発生源を断つことで、0.5sqのVSF線でも電気的・熱的に有り余るほどの安全マージンが確保されることが論理的に証明できます。

第4章:改修実践①|ソケット配線の「両側給電」化

理論の裏付けが取れたところで、実作業に入ります。まずは照明部分の金属製反射板(シャーシ)を取り外し、両端に付いている蛍光灯ソケット(G13口金用)の配線を根本から作り直します。

取り外した照明の金属製反射板
キャビネットから取り外した反射板。両端にG13ソケットが配置されている。
各ソケットの2ピン間を緑の渡り線でショートさせ、片方に白線、もう片方に黒線をハンダ付けした状態。

4-1. ソケットの2ピンを短絡(ショート)させる理由

今回導入するのは、構造がシンプルで安全性が高い「両側給電」タイプのLED蛍光灯です。両側給電の直結工事では、片方のソケットにL(黒線)、もう片方のソケットにN(白線)を接続しますが、この際、「各ソケット内の2つの端子をそれぞれ渡り線でショートさせる」のが鉄則です(写真では緑色の短い被覆線で端子間をジャンパーしています)。

  • LED管の内部仕様への完全対応: 市販の両側給電LED管には、「口金の2ピンが内部で短絡されている製品」と「片方のピンにしか内部回路が繋がっていない製品」が混在しています。ソケット側で2ピンを同極で短絡させておけば、将来どのメーカーのLED管に交換しても100%確実に給電されます。
  • 接触信頼性の向上: 2つのピンから並列に給電することで、ソケットの片側のバネ接点が経年劣化していても接触不良や発熱を防げます。
praxis
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ちなみに、左右のソケットのどっちに黒(L)を繋いで、どっちに白(N)を繋いでも問題ないで。交流やし、LED管の内部にはブリッジダイオード(整流回路)が入っとるから、極性がどっち向きでも自動で直流に変換してくれるんや。

なお、従来の蛍光灯回路に存在した「雑音防止用コンデンサ」はすべて撤去します。ハンダ付けした端子部分が金属シャーシに接触して地絡(漏電)しないよう、組付け時は絶縁処理とクリアランス確保を徹底します。
※通常ソケット部分はプラスチックカバーで覆われており、絶縁されている。

第5章:改修実践②|インバータ蛍光灯のLED化バイパス結線

続いて、電装ボックス側のバイパス加工に移ります。

5-1. コネクタからピンを抜かず「配線カット&中継」を選んだ理由

制御基板上の赤ソケット(CN1)と、照明側へ繋がる白ソケットは、JSTのVHシリーズ等に代表されるナイロン製圧着コネクタです。当初はソケットから金属ピン(コンタクト)を引き抜いて配線を差し替えることも検討しましたが、以下の理由から「配線を途中でカットしてコネクタごと再利用する」方針に切り替えました。

  • 熱劣化による樹脂割れリスク: 20年以上インバータの熱に晒されたナイロンハウジングは可塑剤が抜けて脆化しています。抜け止めツメ(ランス)を精密ドライバーで押した瞬間にソケット自体が砕けるリスクが極めて高い状態です。
  • メンテナンス性の維持: 赤ソケットと白ソケットのハウジングをそのまま活かせば、組戻し時に基板や照明ユニットをワンタッチで脱着できるメリットが残ります。
インバータ 蛍光灯 LED化 バイパス結線した基板
インバータ基板への接続を完全に断ち、赤ソケット(CN1)からの出力線と白ソケット(照明側)の配線を差込型コネクタで直結バイパスした状態。この白のソケットは下部の照明器具へと接続され、LEDへ電力を供給する。

5-2. 「より線」を確実に結線する部材の選択

カットした赤ソケットの配線と白ソケットの配線は、どちらも「より線(撚り線)」です。

Logico
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ここで第二種電気工事士の試験で使った「リングスリーブ(E形)」をそのまま使うのはNGです。一般的なリングスリーブはVVFケーブルのような「単線」用として設計されているため、より線同士を圧着すると引張強度が不足し、すっぽ抜けや接触不良による発熱の原因になります。

より線同士を安全に結線するには、「より線対応のワンタッチ差込型コネクタ(WAGO WFRシリーズ等)」または「絶縁被覆付閉端接続子(CEスリーブ)」を使用します。今回は手直しや確認が容易な透明ハウジングのより線対応コネクタを使用し、心線が奥まで確実に挿入されていることを目視確認した上でロックしました。

なお、右端の茶色いインバータ基板は、入力も出力も完全に切り離されて電気的に孤立した状態(ただの飾り)になっているため、そのままシャーシ上に残しておいても回路上の悪影響は一切ありません。

第6章:組み戻しと点灯確認|高周波ノイズからの解放

すべての加工が完了したら、テスターでL-N間の短絡がないこと、およびシャーシとの絶縁が保たれていることを確認し、電装ボックスと反射板をキャビネット本体へ組み戻します。

電装ボックスの組み戻しとコネクタ接続
電装ボックスを元の位置に固定し、バイパスした白ソケットを照明側のハーネスと結合。駆動ベルトや可動部に配線が干渉しないよう取り回す。

基盤から下部の照明器具まで配線されている配線をWAGOコネクタを介して照明器具と結線します。
反射板を固定し、購入した20W形直管LED蛍光灯(消費電力9W)をソケットに装着します。

組み戻し完了後(消灯時)。外観はオリジナルと全く変わらない。
ブレーカーを投入し、手元スイッチONで即座に点灯。チラつきや発振音も皆無。

分電盤のブレーカーをONに戻し、キャビネット手元の照明スイッチを押した瞬間、タイムラグなしでパッと鮮やかな昼白色(5500K)の光が灯りました。制御基板上によるON/OFF制御も狙い通りに機能しています。

praxis
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バッチリや!インバータ特有の「ジー」という耳障りな高周波ノイズも消えて、消費電力も半分以下(18W+回路ロス → 9W)になったで。

Logico
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お疲れ様、praxis。故障リスクの塊だった古いインバータ回路を切り離したことで、今後は一般的なAC100V両側給電のLED管を電球感覚で交換できるようになりましたね。

まとめ:回路の「ブラックボックス」を解き明かす価値

メーカーのサポート期間が終了した古い住宅設備(電動キャビネットや洗面化粧台など)は、内蔵されたインバータ基板が故障すると「ユニット丸ごと交換で十数万円」という見積もりを突きつけられがちです。

しかし、結線図を読み解き、基板上の素子の役割を特定し、不要な高圧発生部をバイパスするという「電気の基礎原理」さえ押さえていれば、わずか千円程度の部材費で安全かつ半永久的に使える設備へとアップデートできます。これこそが、第二種電気工事士というライセンスを手にする最大のメリットと言えるでしょう。

 

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参考文献・外部リソース

  • 一般社団法人 日本照明工業会(直管LEDランプ使用上の注意・互換性情報):
    https://www.jlma.or.jp/
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