【保存版】外壁塗装DIYの完全ガイド|失敗しない塗料選びと部位別の塗装戦略を建築士が徹底解説

塗装された塀に身を預ける猫 Thoughts
UnsplashKirill Veprikovが撮影した写真

物事は可能な限り単純にすべきだ。ただし、単純にしすぎてはならない。

アルバート・アインシュタイン

「外壁を自分で塗装してみたい…でも、失敗したらどうしよう」

「業者に頼むと80万円以上かかる外壁塗装、DIYでどこまでできる?」
「塗料の種類が多すぎて、何を選べばいいのか全く分からない…」

そんな悩みを抱えていませんか?

こんにちは。建築士で、このブログ『n-1 Lab.』を運営しているPRAXISです。

外壁塗装は、家を守る「鎧」を維持するための重要なメンテナンス。プロに依頼すれば確実ですが、コストは決して安くありません。一方、DIYに挑戦すれば大幅にコストを抑えられますが、知識不足による失敗のリスクもあります。

特に多い失敗パターンが以下の3つです:

  1. 外塀に微弾性フィラーを塗って、数ヶ月後に塗膜が風船のように膨れてしまった
  2. ホームセンターの安いシリコンシーラントを使って、塗装が汚染されてしまった
  3. 場所に合わない塗料を選んで、数年で剥がれてきた

これらの失敗は、すべて「知識不足」が原因です。逆に言えば、正しい知識さえあれば、DIYでも十分に満足できる仕上がりを実現できます

この記事では、建築士の視点から、外壁塗装DIYで失敗しないための「塗料の基礎知識」「部位別の塗装戦略」「劣化診断の方法」「長期メンテナンス計画」まで、実践的な知識を網羅的に解説します。

特に、多くの人が間違えやすい「外壁」と「外塀」の塗装の違い、「シーラー」と「フィラー」の使い分けなど、プロが当たり前のように知っている重要なポイントを、初心者にも分かりやすく説明します。

この記事で分かること

  • 塗装の本質:なぜ塗装は必要なのか?塗膜の3つの役割
  • 塗料の4つの成分と、それぞれの役割
  • 水性塗料 vs 油性塗料:DIY初心者が選ぶべきは?
  • 樹脂グレード別の耐久年数とコストパフォーマンス
  • 【最重要】外壁 vs 外塀:なぜ塗装方法が違うのか?「背面水」の恐怖
  • 下塗り材の正しい選び方:シーラー・フィラーの使い分け
  • 部位別(外壁・外塀・木部・鉄部)の標準仕様と注意点
  • コーキング処理の正解:「打ち替え」か「増し打ち」か?
  • 絶対NGなコーキング材と、プロが使う材料
  • 劣化診断のセルフチェックリスト:塗り替えサインの見極め方
  • 部位別の塗り替え推奨周期とメンテナンス計画
  • DIY vs 業者依頼:判断のためのフローチャート
  • 施工品質を劇的に上げる道具選びとコツ
    1. 「外壁を自分で塗装してみたい…でも、失敗したらどうしよう」
  1. 第1章:塗装の本質を理解する ー 塗料は建物を守る「鎧」である
    1. 1-1. 塗膜が果たす3つの重要な役割
    2. 1-2. 塗料の缶の中身を覗いてみよう:4つの基本成分
    3. 1-3. 塗膜劣化のメカニズム:敵を知れば対策が見える
  2. 第2章:塗料選びの基礎知識 ー コスパと性能の最適解を見つける
    1. 2-1. 最初の分岐点:水性 vs 油性(溶剤系)
    2. 2-2. 塗料必要量を計算する:モルタル模様の落とし穴
    3. 2-3. 性能の心臓部:樹脂グレードで決まる耐久年数とコスパ
  3. 第3章:【超重要】部位別の塗装戦略 ー 場所が違えば、塗り方も変わる
    1. 3-1. なぜ「外壁」と「外塀」で推奨塗料が違うのか?
      1. 外塀の特殊性:「背面水」という見えない敵
    2. 3-2. 家の外壁塗装戦略
      1. 3-2-1. モルタル外壁の場合
      2. 3-2-2. サイディング外壁の場合:難付着問題に要注意
    3. 3-3. 下塗り材の正しい選び方:シーラー vs フィラー
      1. 素材別・下塗り材の選び方
    4. 3-4. 木部の塗装戦略:「呼吸」を妨げない
    5. 3-5. 鉄部の塗装戦略:サビとの戦い
  4. 第4章:コーキング(シーリング)処理の正解 ー DIYで最もミスが多い工程
    1. 4-1. 防水の要:コーキングを制する者が塗装を制する
    2. 4-2. 【最重要】「打ち替え」か「増し打ち」か?壁の構造で正解が変わる
    3. 4-3. 【絶対NG】このコーキング材だけは使うな!DIY最大の落とし穴
    4. 4-4. コーキング施工の基本手順(打ち替えの場合)
  5. 第5章:塗膜の劣化診断とメンテナンス計画
    1. 5-1. 我が家の健康診断:劣化のサインセルフチェックリスト
      1. 外壁・外塀(モルタル・サイディング)
      2. コーキング(シーリング)
      3. 鉄部(手すり・鉄骨階段・トタンなど)
      4. 木部(ウッドデッキ・破風板など)
    2. 5-2. 部位別:塗り替え推奨周期とメンテナンス計画
  6. 第6章:外壁塗装DIYの黄金ルール5ヶ条
    1. ルール1:汝、準備を怠るなかれ(下地処理)
    2. ルール2:汝、撹拌を怠るなかれ(塗料の準備)
    3. ルール3:汝、厚塗りするなかれ(塗装の基本)
    4. ルール4:汝、重ね塗りを恐れるなかれ(仕上げ)
    5. ルール5:汝、乾燥を待つべし(忍耐)
  7. 第7章:【実践編】施工品質を劇的に上げる道具選びとコツ
    1. 7-1. ローラーの毛丈(毛の長さ)で仕上がりが決まる
    2. 7-2. 洗浄後の乾燥時間:これを守らないと100%失敗する
    3. 7-3. シーラーの塗布目安:「濡れ色」と「艶」
    4. 7-4. 【裏技】ヘアクラックの簡易補修
    5. 7-5. ホームセンターのPB(プライベートブランド)を活用する
  8. 第8章:DIY vs 業者依頼 ー 賢い判断のためのフローチャート
    1. 8-1. メリット・デメリット徹底比較
    2. 8-2. DIY塗装に向いている人・向いていない人
    3. 8-3. セルフ診断フローチャート
  9. まとめ:正しい知識が、あなたの家を守る最強の道具
  10. 付録:用語集
  11. 【付録】外壁のDIY塗装の全知識を一枚にまとめたマインドマップ
    1. 参考文献・外部リソース
    2. 関連記事

第1章:塗装の本質を理解する ー 塗料は建物を守る「鎧」である

1-1. 塗膜が果たす3つの重要な役割

塗装は、単に家を美しく見せるためのものではありません。乾燥して形成される薄い膜「塗膜(とまく)」が、建物を守る3つの重要な役割を担っています。

塗装の役割の図解

🛡️ 役割1:保護(Protection)
紫外線、雨、風、サビなどの外的要因から建物の素材を直接保護し、構造体の寿命を延ばします。これが塗装の最も重要な目的です。

🎨 役割2:美粧(Aesthetics)
美しい色彩や光沢、質感を与えることで、建物の外観価値を高めます。美観の維持は、不動産としての資産価値評価にも直結します。

⚙️ 役割3:機能(Function)
標準的な保護・美粧機能に加え、防カビ・防藻、防水、遮熱・断熱といった特殊な性能を付与し、建物の快適性を向上させます。

1-2. 塗料の缶の中身を覗いてみよう:4つの基本成分

塗料は、主に以下の4つの成分で構成されています。それぞれの役割を理解することが、適切な塗料選びの第一歩です。

塗料の成分構成の図解
成分役割塗膜として残る?
樹脂(Resin)塗膜の骨格。耐久性や密着性など、塗料の基本性能を決める最重要成分✓ 残る
顔料(Pigment)色の源。塗料に色を付け、下地を隠す✓ 残る
添加剤(Additive)防カビ剤、乾燥促進剤など、特殊な機能を付与✓ 残る
溶媒(Solvent)樹脂や顔料を溶かし、塗りやすくする液体(水 or シンナー)✗ 蒸発する
Teacher X
Teacher X

重要ポイント:塗料の価格と性能は、骨格である「樹脂」の種類でほぼ決まります。これがグレードの違いです。次の章で詳しく見ていきましょう。

1-3. 塗膜劣化のメカニズム:敵を知れば対策が見える

塗膜の性能は永続的ではなく、主に以下の3つの外的要因によって徐々に劣化が進行します。

☀️ 劣化要因1:紫外線(UV)
太陽光に含まれる紫外線は、塗膜の主成分である樹脂の分子結合を破壊する最大の敵。これにより塗膜は柔軟性を失い、硬化・脆弱化が進みます。

🔥 劣化要因2:熱(Heat)
太陽光の赤外線による熱や、夏冬の温度変化は、塗膜と素地の膨張・収縮を引き起こし、塗膜に物理的なストレスを与え、ひび割れや剥がれの原因となります。

💧 劣化要因3:水(Water)
雨水や湿気は、塗膜の微細な隙間から浸透し、塗膜の膨れや剥離を引き起こすだけでなく、カビや藻の発生、さらには構造体内部への侵入リスクを高めます。

praxis
praxis

これらの要因は単独で作用するのではなく、紫外線で劣化した塗膜に水が浸透しやすくなるなど、複合的に作用して劣化を加速させます。その結果として現れる具体的な症状が、「チョーキング」「ひび割れ」「塗膜の剥がれ」などです。

第2章:塗料選びの基礎知識 ー コスパと性能の最適解を見つける

2-1. 最初の分岐点:水性 vs 油性(溶剤系)

塗料は溶媒の種類によって「水性」と「油性(溶剤系)」に大別されます。DIYではこの選択が作業性を大きく左右します。

水性塗料と油性塗料の比較を解説した図表
項目💧 水性塗料🔥 油性(溶剤系)塗料
扱いやすさ◎ 抜群△ 慣れが必要
臭い◎ ほぼ無臭✕ 強いシンナー臭(強力換気必須)
安全性◎ 安全(引火性なし)✕ 火気厳禁
後片付け◎ 水道水でOK✕ 専用うすめ液が必要
耐久性○ 近年、油性に匹敵◎ 密着性・耐久性が高い傾向
おすすめ場所室内全般、外壁など広範囲屋外の鉄部など過酷な環境
praxis
praxis

プロの視点から言えば、初心者にまず勧めるのは「水性塗料」です。 臭いが少なく安全で扱いやすいため、近隣への配慮もしやすいのが最大の利点です。近年の水性塗料は性能が向上しており、屋外でも十分に耐久性を持っています。

2-2. 塗料必要量を計算する:モルタル模様の落とし穴

塗装を始める前に、必要な塗料の量を正確に見積もることが重要です。基本的な計算式は以下の通りです:

基本計算式:
必要塗料量(L) = 塗装面積(㎡) ÷ 塗料の塗布面積(㎡/L) × 塗り回数

praxis
praxis

ホームセンターで購入する際、店員さんに「スタッコ仕上げ(またはリシン仕上げ)の壁に使いたい」と伝えれば、適切な量を計算してもらえます。迷ったら相談しましょう。

⚠️ 模様付きモルタル(スタッコ・リシン仕上げ)の重要な注意点

外壁の仕上げが凹凸のある模様(スタッコ仕上げ、リシン仕上げなど)の場合、平滑な面に比べて表面積が大幅に増えるため、約1.5~2倍の塗料が必要になります。

計算例:

  • 塗装面積:100㎡
  • 塗料の塗布面積:10㎡/L(カタログ値)
  • 塗り回数:2回

平滑な壁の場合:
100㎡ ÷ 10㎡/L × 2回 = 約20.0L

模様付きモルタルの場合:
100㎡ × 1.5 ÷ 10㎡/L × 2回 = 約30.0L

塗料の購入前に、必ず壁の仕上げ状態を確認し、余裕を持った量を用意しましょう。作業途中での塗料切れは、色ムラの原因になります。

2-3. 性能の心臓部:樹脂グレードで決まる耐久年数とコスパ

塗料の価格と耐久年数を決定づけるのが、骨格となる「樹脂」の種類です。

樹脂の種別による耐久性の比較を解説した図表
樹脂の種類耐久年数目安特徴・コスト感DIY推奨度
アクリル3〜5年【安価】短期的な美観回復や、頻繁な塗り替えを前提とする場合に限定的に採用
ウレタン5〜7年柔軟性に富むが、シリコンとの価格差が縮まり、採用メリットが薄い
シリコン8〜12年【推奨】耐久性、耐候性、低汚染性に優れ、コストパフォーマンスが最も高い現在の主流
フッ素15年以上【高価】非常に高耐久だが価格も高い。DIYでは下地処理の甘さで性能を発揮できないリスクも
Teacher X
Teacher X

DIYにおいては、コストと性能のバランスが最も優れた「シリコン樹脂塗料」が最適解です。 迷ったらシリコンを選んでおけば、まず失敗はありません。特別な理由がない限り、このグレードを推奨します。

第3章:【超重要】部位別の塗装戦略 ー 場所が違えば、塗り方も変わる

3-1. なぜ「外壁」と「外塀」で推奨塗料が違うのか?

praxis
praxis

これがDIY塗装で最も重要なポイントです。多くの初心者がここで失敗します。同じコンクリートやモルタルなのに、なぜ「外壁」と「外塀」では推奨される塗装が違うのでしょうか?

外塀と外壁の塗装方法が異なる理由は湿気にあることを伝えるイラスト

答えは、壁の裏側にある「湿気」との付き合い方に隠されています。

外塀の特殊性:「背面水」という見えない敵

外塀は地面に直接接しているため、常に地面から水分を吸い上げています(背面水)。 この水分が、太陽の熱で温められて水蒸気となり、逃げ場を失うと塗膜を内側から押し上げ、風船のように膨れてしまいます。

背面水の解説イラスト

一方、家の外壁は基礎によって地面から切り離されているため、背面水の影響が少なく、むしろ雨水の浸入を防ぐことが最優先されます。

【外塀塗装の鉄則】

外塀には、常に湿気を逃がす「透湿性のある塗料」を選ぶこと。

✓ 推奨仕様:カチオンシーラー(下塗り)+ 透湿性のある水性塗料(上塗り)

✕ 絶対NG:微弾性フィラー(通気性が低く、塗膜が膨れる原因に)

3-2. 家の外壁塗装戦略

3-2-1. モルタル外壁の場合

家の外壁は外塀とは逆に、雨水の浸入を防ぐことが最優先されます。

✓ 推奨仕様:微弾性フィラー(下塗り)+シリコン系弾性塗料の使用がセオリー

微弾性フィラーは、ゴムのような厚い膜を形成し、モルタルに発生しやすい細かなひび割れ(クラック)を埋めて追従することで、雨漏りを防ぐ効果があります。

3-2-2. サイディング外壁の場合:難付着問題に要注意

モルタル外壁同様に、窯業系サイディング外壁には、微弾性フィラー(下塗り)+シリコン系弾性塗料の使用がセオリーですが、サイディング材の種別によって異なります(例:金属系サイディング外壁の場合は、弱溶剤プライマーを下塗り)。
特に近年使用されている高機能サイディング外壁の塗装には注意が必要です。

praxis
praxis

サイディングの場合、塗装よりも先にコーキングの劣化が雨漏りに直結します。目地のコーキングが劣化している場合は、塗装前に必ず打ち替えを行いましょう。(詳細は第4章参照)

⚠️ 近年のサイディングには「難付着サイディング」が増えている

2000年代以降に施工されたサイディングボードの中には、表面に特殊なコーティング(光触媒、親水コート、フッ素コートなど)が施されているものがあります。

このタイプのサイディングに普通のシーラーを塗ると:

  • 塗装直後は問題なく見えるが、数年で塗膜が「ペラペラ」と剥がれてくる
  • 下地との密着が全く得られていない

✓ 対策:必ず「難付着対応シーラー」を使用

  • 多くは油性(弱溶剤)タイプ
  • パッケージに「難付着サイディング対応」と明記されている
  • 例:エポキシ系シーラー、専用プライマーなど

判断方法:

  • 築10〜15年以内で、表面に艶がある、または水をかけると弾く→難付着の可能性大
  • 不明な場合は、ホームセンターで相談、またはサイディングのメーカー・型番を調べる

3-3. 下塗り材の正しい選び方:シーラー vs フィラー

外壁下塗り材には大きく分けて「シーラー」と「フィラー」の2種類があります。この使い分けを間違えると、数年で塗膜が剥がれる原因になります。

特徴シーラー(Sealer)微弾性フィラー(Filler)
役割のたとえ「化粧水」のように、下地に浸透して固める「コンシーラー」のように、表面の凹凸やヒビを埋める
膜の厚さ薄い膜(薄膜)厚い膜(厚膜)
主な目的密着性の向上、塗料の吸い込み防止表面を平滑に整える、細かなひび割れを埋める
得意なこと下地深くまで浸透し、ガッチリ密着させるゴムのように伸び縮みし、下地の動きに追従する

素材別・下塗り材の選び方

素材による下塗り材の使い分けを解説した図表
素材推奨下塗り材理由
外塀(ブロック・モルタル)カチオンシーラー透湿性を確保し、背面水による塗膜の膨れを防ぐ
家の外壁(モルタル)微弾性フィラーひび割れを埋め、雨水の浸入を防ぐ
木部吸い込み止めシーラー塗料の吸い込みを防ぎ、色ムラを防ぐ
鉄部油性サビ止めプライマーサビの発生を根本から防ぐ
プラスチック・金属非鉄金属用プライマー密着性を劇的に向上させる
praxis
praxis

もしホームセンターで何を選べば良いか迷ったら、「カチオン型シーラー」を選んでおけば間違いありません。傷んだ下地にも深く浸透して表面を固める効果が高く、様々な上塗り塗料との相性も良いため、DIYで迷ったらこれを選べば失敗が少ない、まさに「一択」と言える万能選手です。

3-4. 木部の塗装戦略:「呼吸」を妨げない

木材は湿気を吸ったり吐いたりして「呼吸(伸縮)」しています。表面に硬い膜を作る「造膜タイプ」の塗料を屋外の木部に塗ると、木の伸縮に追従できず、すぐにパリパリと剥がれてしまいます。

✓ 推奨:木に染み込んで保護する「浸透タイプ(ステイン)」の塗料

これにより、木目を活かしつつ、剥がれにくい仕上がりになります。

部位塗り替え推奨周期劣化のサイン
木部(デッキ・破風板)3〜5年色あせ、水を弾かなくなる
Teacher X
Teacher X

木は劣化が早い素材です。腐食が進む前に、こまめに「重ね塗り」するのが長持ちのコツ。3〜5年ごとの定期的なメンテナンスを心がけましょう。

3-5. 鉄部の塗装戦略:サビとの戦い

鉄部は錆の発生が構造的な強度低下に直結するため、他の部位よりも早期の発見と対処が極めて重要です。

必須工程:

  1. ケレン(サビ落とし):塗装の前に必ずヤスリやワイヤーブラシで、サビや古い塗膜を徹底的に除去
  2. 油性サビ止め塗料:ケレン後、必ず油性サビ止めを塗装し、新たな錆の発生を抑制
  3. 上塗り:油性(弱溶剤)塗料を強く推奨
部位塗り替え推奨周期劣化のサイン
鉄部(手すり・階段・トタン)5〜7年チョーキング、小さなサビの発生
praxis
praxis

小さな点サビの段階で対処することが重要です。赤サビが全体に広がると、部材に穴が開くリスクがあります。早期発見・早期対処が鉄則です。

なぜ鉄部には油性塗料が推奨されるのか?

水性塗料も進化していますが、金属への「密着性」と「防錆力(サビを抑える力)」においては、依然として油性塗料が圧倒的に優れています。

第4章:コーキング(シーリング)処理の正解 ー DIYで最もミスが多い工程

4-1. 防水の要:コーキングを制する者が塗装を制する

外壁や窓サッシ廻りに充填されているゴム状の材料「コーキング(シーリング)」は、建物の防水性能を支える生命線です。その劣化は雨漏りに直結するため、特に注意深い点検が求められます。

劣化のサイン:

  • ひび割れ・亀裂:紫外線でシーリング材が硬化し、建物の動きに追従できなくなった状態
  • 肉やせ:体積が減少し、壁材との間に隙間が生じている状態
  • 剥離:壁材から完全に剥がれ、接着面が露出している状態(即時補修必須)

🚨 なぜコーキングでDIYの失敗が多いのか?

外壁塗装DIYにおいて、最も失敗が多いのがコーキング処理です。理由は以下の3つ:

  1. 間違った材料を選んでしまう(特にシリコンシーラント)
  2. 「打ち替え」と「増し打ち」の判断を誤る
  3. 施工方法が不適切(プライマーの省略、厚みの不足など)

この章では、これらの失敗を防ぐための正しい知識を解説します。

4-2. 【最重要】「打ち替え」か「増し打ち」か?壁の構造で正解が変わる

壁の種類推奨施工法理由
サイディング壁の目地打ち替え(撤去して新設)必須サイディングの目地は地震や熱膨張の動きを逃がす「ワーキングジョイント」。古い硬化したゴムの上から増し打ちしても、クッション性は回復しない。必ずカッターで既存シーリングを撤去してから新設
モルタル壁のサッシ廻り増し打ち(三角シール)推奨無理に古いコーキングを撤去しようとすると、奥にある防水紙を傷つけるリスクがあります。また、物理的に打ち替えが困難であるケースもあります。そのため、既存シーリングの上から三角形に増し打ちする「ブリッジシール」が安全です。
※物理的に撤去可能かつ、劣化が著し場合は撤去が好ましい。サッシ廻りの納まりや劣化状況などから総合的に判断する必要があるため、判断に迷う場合はプロに相談するのが安全です。
Teacher X
Teacher X

なぜサイディング目地は必ず打ち替えなのか?
サイディングボードは、気温変化で伸縮します。その動きを吸収するのが目地のコーキングです。古いゴムは弾力性を失っているため、その上から増し打ちしても、建物の動きに追従できず、すぐにひび割れてしまいます。

⚠️ この判断を間違えると、防水効果が失われたり、逆に雨漏りのリスクを作ってしまいます

4-3. 【絶対NG】このコーキング材だけは使うな!DIY最大の落とし穴

コーキング材には、シリコンシーラントではなく、変性シリコンを使用することを注意するイラスト
praxis
praxis

ホームセンターで迷ったら、店員さんに「外壁塗装に使えるコーキング材はどれですか?」と聞いてください。「シリコンシーラントはダメ」と覚えておけば、大きな失敗は防げます。

🚨 最重要警告:ホームセンターの安価な「シリコンシーラント」は絶対NG!

これは、私が見てきた外壁塗装DIYの失敗で最も多いケースです。

なぜダメなのか?

  • 施工後、数ヶ月〜数年かけて油分が染み出す
  • その油分が塗料を完全に弾き、汚染の原因となる
  • 一度油分が染み出すと、除去は極めて困難
  • 最悪の場合、シーリングを全て打ち替える羽目に

❌ 絶対に使ってはいけないもの:

  • バス・キッチン用シリコンシーラント
  • 「シリコン100%」と書かれた安価な製品
  • パッケージに「塗料がのる」と明記されていない製品

✓ プロが使う正しい選択:

  • 変成シリコン(ノンブリードタイプ):油分が出ない、塗装可能
  • ウレタンシーリング:密着性が高く、塗装可能

購入時は必ず「塗料がのる」「ノンブリード」と明記された製品を選んでください。数百円の差が、数年後の仕上がりを決定づけます。

4-4. コーキング施工の基本手順(打ち替えの場合)

正しい材料を選んだら、次は正しい施工方法です。

手順:

  1. 既存シーリングの撤去(サイディング目地の場合)
    カッターで切れ目を入れ、マイナスドライバーやシーリングリムーバーで剥がす。目地の奥の「ボンドブレーカー」は残す(これがないと三面接着になってしまう)
  2. 清掃
    目地の中のゴミ、カビ、古いシーリングの残骸を徹底的に除去。汚れが残っていると密着不良の原因に
  3. プライマー塗布
    シーリング材に付属のプライマーを目地に塗る。プライマーを省略すると、数年で剥がれる原因になります。塗布後、5〜10分乾燥させる
  4. マスキングテープで養生
    目地の両側にマスキングテープを貼り、仕上がりを美しくする。テープは目地幅の1〜2mm外側に貼る
  5. シーリング充填
    コーキングガンでシーリング材を充填。目地の奥までしっかり押し込むように、ゆっくり充填。ケチらないで、目地深さの50%以上は充填する(薄すぎると切れやすい)
  6. ヘラで押さえて成形
    専用のヘラ(または指)で表面を平滑に整える。目地の中に空気が残らないよう、しっかり押さえる
  7. マスキングテープ撤去
    シーリングが固まる前(5〜10分以内)にテープを剥がす。固まってから剥がすと、シーリングが一緒に剥がれることがある
  8. 養生期間
    完全硬化まで1〜3日かかる(製品により異なる)。この間、上から塗装してはいけない(説明書の指示に従う)
Teacher X
Teacher X

コーキング作業は、塗装作業の中でも特に経験が求められる工程です。初めての方は、まず目立たない場所で練習することを強くお勧めします。

第5章:塗膜の劣化診断とメンテナンス計画

5-1. 我が家の健康診断:劣化のサインセルフチェックリスト

塗装のタイミングを逃すと、建物の劣化が進行し、余計な補修費用がかかることもあります。以下のサインが見られたら、塗り替えを検討する時期です。

外壁・外塀(モルタル・サイディング)

点検項目診断基準放置した場合のリスク
チョーキング壁を手で触ると白い粉が付着塗膜の防水機能が著しく低下、雨水が浸透しやすくなる
ひび割れ(クラック)【重要】幅0.3mm以上のクラック躯体内部の鉄筋の錆を誘発、コンクリートの爆裂→構造耐力低下の可能性
カビ・藻の発生日当たりの悪い面に緑色や黒色の繁殖美観を損ない、塗膜劣化を加速
塗膜の膨れ・はがれ水ぶくれ状に膨れ、剥がれ落ち下地が露出素地を保護する機能が失われ、素材自体の劣化が急速に進行

📌 ひび割れ(クラック)の種類と対処法の基本

ひび割れは、幅によって深刻度と対処法が異なります:

種類 深刻度 対処法
ヘアークラック 0.3mm未満 △ 軽度 微弾性フィラーで対応可能(DIY可)
構造クラック 0.3mm以上 ✕ 重度 専用補修材が必要。深いクラックは専門家への相談を推奨

⚠️ 注意:0.3mm以上のひび割れが複数ある場合、または建物の角やサッシ廻りから放射状に広がるひび割れがある場合は、構造的な問題の可能性があります。塗装前に建築士や専門業者に相談することを強く推奨します。

📝 詳細な補修方法は別記事で解説予定:
ひび割れの原因診断、補修材の選び方、DIYでできる補修とプロに依頼すべき補修の見極め方など、体系的に整理した記事を準備中です。

コーキング(シーリング)

劣化状態説明対処
ひび割れ・亀裂紫外線でシーリング材が硬化防水機能の低下が始まっているサイン、早期補修推奨
肉やせ体積が減少し、壁材との間に隙間隙間から雨水が侵入するリスク、打ち替え推奨
剥離壁材から完全に剥がれ、接着面が露出防水機能は完全に失われており、即時補修必須

鉄部(手すり・鉄骨階段・トタンなど)

劣化状態説明対処
チョーキング外壁と同様、塗膜の保護機能が低下早期対処推奨
サビの発生小さな点サビや赤サビの浮き重大な劣化の兆候、放置すると腐食が内部へ進行し、部材の強度低下や穴あきに

木部(ウッドデッキ・破風板など)

劣化状態説明対処
色あせ防腐・防カビ・紫外線防止剤の効果が失われたサイン保護機能が低下、再塗装推奨
撥水性の低下水をかけても染み込む状態木材が水分を吸収しやすくなり、腐食リスク増大
塗膜の剥がれ特に造膜タイプのペンキを塗った場合木の伸縮に追従できず剥離、浸透タイプへの変更推奨
腐食木材が柔らかくなり、指で押すと崩れる構造的な強度が失われており、部材交換が必要な可能性

5-2. 部位別:塗り替え推奨周期とメンテナンス計画

建物の部位によっては、使用する塗料のグレードに関わらず、素材自体の特性によってメンテナンス周期が決定される場合があります。

塗装の塗り替え頻度を解説したイラスト
部位塗り替え推奨周期特記事項
木部3〜5年木材は水分を吸収しやすく、伸縮を繰り返すため劣化が早い。腐食が進行する前に、こまめな塗り重ねによる保護が長持ちの秘訣
鉄部5〜7年錆の発生が致命的な劣化に繋がる。小さな点サビの段階で対処することが重要。赤サビが全体に広がると、部材に穴が開くリスクがある
外壁・外塀10〜12年構造体への水の侵入を防ぐための最後の防衛線。特にシーリングの寿命が、全体の塗り替え周期を決定づけることが多い
※高耐久性塗料やシーリング材の場合は周期を長くできることもあります。
Teacher X
Teacher X

定期的なチェックが、大規模な補修を防ぎ、結果的にコストを抑えることに繋がります。年に数回、劣化のサインを見逃さないようにしましょう。

第6章:外壁塗装DIYの黄金ルール5ヶ条

知識を身につけたら、いよいよ実践です。以下の5つのルールを守れば、仕上がりは格段に向上します。

塗装成功のための黄金ルール5か条

ルール1:汝、準備を怠るなかれ(下地処理)

必須工程:

① 清掃(洗浄)

  • 高圧洗浄機やブラシで、汚れ、コケ、カビ、古い塗膜を徹底的に除去
  • 特に油分(手垢、排気ガスの油煙など)は塗料の密着を阻害する大敵
  • 洗浄後は完全に乾燥させる

② 補修

  • ひび割れ(クラック)を補修材で埋める
  • 0.3mm未満のヘアークラックは微弾性フィラーで対応可能
  • 0.3mm以上のクラックは、専用のコーキング材やモルタル補修材で埋める
    ※クラックの種別や修繕方法に関する詳細な補修方法は別記事で解説予定です

③ ケレン(鉄部の場合)

  • 鉄部のサビや古い塗膜を、ヤスリやワイヤーブラシで徹底的に削り落とす
  • このケレン作業を怠ると、どんな高級な塗料も意味をなしません
  • サビの上から塗装しても、内部で腐食が進行し、すぐに塗膜が浮いてきます

④ 養生(マスキング)

  • 窓やドア、地面、植栽など、塗料が付いてはいけない部分を保護
  • マスキングテープとビニールシート(マスカー)を使用
  • この一手間が仕上がりの美しさを決定づけます
  • 養生は作業前に丁寧に、撤去は塗料が半乾き状態のときに行うのがコツ
Teacher X
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プロは塗装作業全体の時間のうち、50%以上を下地処理に費やします。「急がば回れ」——この格言を肝に銘じてください。

🚨 最重要警告:下地処理を軽視してはいけない理由

「塗装品質の80%は下地処理で決まる」——これはプロの世界の常識です。

どんなに高級な塗料を使っても、下地処理を疎かにすれば:

  • 数ヶ月〜数年で塗膜が剥がれてくる
  • 塗装面に凹凸やムラが目立つ
  • 汚れや油分が残っていると、塗料が弾かれる

DIY塗装で最も時間をかけるべきは、華やかな「塗装」ではなく、地味な「下地処理」です。ここに労力を惜しまないことが、成功への最短距離です。

ルール2:汝、撹拌を怠るなかれ(塗料の準備)

缶の中の塗料は、樹脂や顔料などの成分が底に沈殿・分離しています。使用前に必ず棒などで容器の底からしっかりとかき混ぜ、成分を均一にしてください。

Teacher X
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また、塗料が密着しない可能性のある素材や特殊な処理をされた素材には、事前に目立たない部分で試し塗りを行い、付着性などを確認しておきましょう。

ルール3:汝、厚塗りするなかれ(塗装の基本)

一度に厚く塗ろうとすると、液だれや乾燥不良、ムラの原因になります。鉄則は「薄く、均一に」です。

ローラーの使い方のコツ:

  1. まずW字を描くように塗料を配る
  2. その後、上下にローラーを動かして均一にならす

ルール4:汝、重ね塗りを恐れるなかれ(仕上げ)

ほとんどの塗料は、2回塗り以上で本来の耐久性や美しい色を発揮するように設計されています。1回目が乾いたら、2回目を丁寧に塗り重ねましょう。

ルール5:汝、乾燥を待つべし(忍耐)

塗料の説明書に記載されている乾燥時間は必ず守ってください。特に重ね塗りの間の乾燥時間が不十分だと、塗膜の密着性が低下し、剥がれの原因となります。焦りは禁物です。

Teacher X
Teacher X

⚠️ 塗り重ね乾燥時間を守らないと:
半乾きの状態で上から塗ると、下の塗膜が縮んでシワができたり、密着不良で剥がれやすくなります。缶に書いてある「塗り重ね可能時間」は、最低限守るべき時間です。

第7章:【実践編】施工品質を劇的に上げる道具選びとコツ

基本ルールを守るだけでなく、以下の「プロの現場知識」を取り入れることで、仕上がりは格段に向上します。

7-1. ローラーの毛丈(毛の長さ)で仕上がりが決まる

📌 ローラー選びは、壁の凹凸で決まる

ローラーの「毛丈(毛の長さ)」を壁の仕上げに合わせないと、塗りムラや塗料の無駄遣いが発生します。

毛丈適した場所特徴
短毛(5〜8mm)平らな鉄扉、サイディング、平滑なモルタル仕上がりが非常に綺麗。凹凸の多い壁には不向き
中毛(13mm前後)一般的な外壁全般万能選手。迷ったらこれを選ぶ
長毛(20mm以上)スタッコ仕上げ、リシン仕上げ凹凸の奥まで塗料が入る。スタッコに短毛を使うと塗料が全く入らず地獄を見る
praxis
praxis

特にスタッコ・リシン仕上げの外壁は、必ず長毛ローラーを使ってください。短毛ローラーを使うと、表面だけに塗料が付いて凹凸の奥に入らず、乾燥後に「塗りムラ」だらけになります。これは初心者が最も失敗しやすいポイントです。

7-2. 洗浄後の乾燥時間:これを守らないと100%失敗する

高圧洗浄機やデッキブラシで苔・汚れを落とした後:

  • 夏場(晴天):最低1日(24時間)
  • 冬場・曇天・湿度が高い日:2日以上

🚨 濡れたまま塗装すると100%膨れる

壁が完全に乾燥していない状態で塗装すると、内部の水分が閉じ込められ、太陽熱で気化して塗膜を内側から押し上げます。その結果、数日〜数週間で塗膜が風船のように膨れてきます。

判断方法:

  • 手で触って湿気を感じない
  • 壁の色が完全に元の色に戻っている(濡れ色が残っていない)
  • 日陰部分も含めて全体が乾燥している

7-3. シーラーの塗布目安:「濡れ色」と「艶」

下塗り(シーラー)を塗る際、どれくらい塗ればいいのか?という疑問への答えは:

✓ 壁が「濡れ色」になり、表面に「艶」が出るまで塗る

  • 吸い込みが激しい傷んだ壁の場合、1回目はどんどん吸い込まれて艶が出ない
  • その場合は2回塗りが必要(1回目が乾いてから)
  • 表面に艶が出て、塗料が吸い込まれなくなったら、吸い込み止めは完了

7-4. 【裏技】ヘアクラックの簡易補修

微細なひび割れ(ヘアクラック:0.3mm未満)がある場合、フィラーを使わなくても簡易的に補修できる方法があります。

手順:

  1. 変成シリコンコーキング(ノンブリードタイプ)を少量、指に取る
  2. ひび割れ部分に指ですり込むように埋める
  3. 余分なコーキングをウエスで拭き取る
  4. 乾燥後(1日程度)、塗装を開始

⚠️ 注意:普通の「シリコンシーラント」は絶対に使わないこと

安価な「シリコンシーラント」は油分が染み出し、塗料を弾きます。必ず「変成シリコン(ノンブリード)」または「ポリウレタン」を使用してください。

7-5. ホームセンターのPB(プライベートブランド)を活用する

praxis
praxis

塗り面積が少ない場合でコストを抑えたいなら、ホームセンターのPB塗料もお勧めです。

  • コーナン「LIFELEX」
  • カインズ「STYLE」
  • DCMブランド

これらのPB塗料は、大手メーカー(ニッペ、アサヒペン、カンペなど)のOEM製品であることが多く、中身はしっかりしているのに価格が2〜3割安いのが特徴です。

また、「外壁専用」がなくても、「外部用・多用途」と書かれていれば外壁や塀に使用可能です。店員さんに確認してみましょう。

ただし、余りに安い塗料はアクリル系塗料であることが多いため、長持ちさせたい場合はシリコン系塗料(アクリルシリコン系塗料)を購入することをお勧めします。

第8章:DIY vs 業者依頼 ー 賢い判断のためのフローチャート

8-1. メリット・デメリット徹底比較

比較項目DIY業者依頼
費用◎ 大幅に安い(材料費のみ、3〜10万円程度)△ 高い(50〜100万円以上)
仕上がり品質△ 技術次第(ムラや早期剥離のリスク)◎ 高品質(専門知識と技術で均一な仕上がり)
時間と労力✕ 多大な時間と労力が必要◎ すべて任せられる
保証・アフター✕ 全て自己責任◎ あり(施工後の不具合にも対応)
達成感◎ 非常に高い

8-2. DIY塗装に向いている人・向いていない人

DIYに向いている人:

  • とにかくコストを抑えたい方
  • 時間をかけてコツコツ作業を楽しめる方
  • 細部まで自分の好みにこだわりたい方
  • 失敗も「味」として受け入れられる達成感を重視する方

業者依頼に適している人:

  • 高品質な仕上がりを確実に求める方
  • 時間や労力をかけたくない方
  • 保証やアフターフォローによる安心感を重視する方
  • 高所作業など安全面での不安がある方

8-3. セルフ診断フローチャート

判断ポイント:

1. 場所はどこか?

  • 地面に接する外塀か? → Yes: 透湿性塗料を使うならDIY好適対象
  • 家の外壁か? → Yes:0.3mm以上のひび割れやコーキングの断裂があるか?
    • Yes: プロに点検を依頼(構造的リスクの可能性)No: DIY可能

2. 素材は何か?

  • 木部・鉄部か? → Yes: 正しい塗料(浸透ステイン/油性塗料)と下地処理(ケレン)を理解していればDIY可能

3. 作業範囲は?

  • 高所作業(2階以上)が必要か?
    • Yes: 安全のため足場が必要。プロへの依頼を強く推奨
    • No: DIY可能
praxis
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「なぜ」を理解したあなたなら、適切な判断ができます。迷ったときは、無理せず専門家に相談しましょう。

まとめ:正しい知識が、あなたの家を守る最強の道具

この記事でお伝えしたかった最も重要なポイントは、以下の3つです:

  1. 塗装の本質を理解すること
    塗装は単なる美観のためではなく、建物を守る「鎧」である。塗膜の劣化は、紫外線・熱・水の複合的な作用によって進行する
  2. 場所によって最適な塗料・工法が全く異なること
    外壁と外塀では、背面水の有無により推奨塗料が正反対。シーラーとフィラーの使い分けが、塗装の寿命を決める。コーキングは「打ち替え」か「増し打ち」か、壁の構造で判断が変わる
  3. 定期的な劣化診断とメンテナンス計画の重要性
    早期発見・早期対処が、大規模補修を防ぎ、コストを抑える。部位ごとの推奨周期を理解し、計画的にメンテナンスを行う

塗装は「お化粧」、そして「鎧」です。下地処理という「洗顔とスキンケア」、下塗りという「化粧下地」、上塗りという「ファンデーション」——これらの役割分担を意識するだけで、あなたのDIYはプロの仕上がりに大きく近づきます。

適切な知識を持って「化粧下地」である下塗り材を選び、一つひとつの工程を丁寧に作業することで、あなたのDIY作品の質は驚くほど向上します。

さあ、正しい知識という最強の武器を手に入れたあなたなら、きっとプロ顔負けの素晴らしい仕上がりを実現できるはずです。まずはご自宅の外塀やウッドデッキなど、小さな範囲から下塗りの効果を試してみてはいかがでしょうか。

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付録:用語集

用語説明
塗膜塗料が乾燥して形成される薄い膜。建物を保護する役割を果たす
チョーキング塗膜の樹脂が劣化し、顔料が粉状になって表面に浮き出る現象
背面水外塀が地面から常に吸い上げている水分
透湿性内部の湿気を外部に放出させる性能
ケレン鉄部のサビや古い塗膜を削り落とす作業
シーラー下地に浸透して固める薄膜の下塗り材
フィラー表面の凹凸を埋める厚膜の下塗り材
ワーキングジョイント地震や熱膨張の動きを吸収するための目地
ノンブリードタイプ油分が染み出さないコーキング材
カチオンプラスイオン(陽イオン)のこと。古い壁と電気的に強力に密着する

【付録】外壁のDIY塗装の全知識を一枚にまとめたマインドマップ

今回解説した内容の全体像を、一枚のマインドマップにまとめました。外壁塗装や外塀塗装で迷った時に、いつでも見返せる保存版としてご活用ください。

参考文献・外部リソース

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