【保存版】外塀塗装DIY実践録|スタッコの「膨れ」を根絶するプロの補修術と材料選び【予算1万円】

塗装したスタッコ面の写真 Project
実際に塗装した外塀スタッコ面の写真

道を知ることと、道を歩むこととは違うのだ

映画「プラトーン」

「せっかくの休日、ふと家の外塀を見たら、なんだか黒ずんで汚い……」
「よく見ると、塗装が水ぶくれのようにプクプクと膨れている……」

そんな光景を見て見ぬふりをしていませんか?

こんにちは。建築士で、このブログ『n-1 Lab.』を運営しているPRAXISです。

家の顔とも言える「外塀」。ここが綺麗だと家全体が引き締まって見えますが、逆に汚れていると、どんなに立派な家でも古ぼけた印象を与えてしまいます。特に、築年数が経ったモルタルやスタッコ仕上げの塀は、雨だれやコケ、そして「塗膜の膨れ」という厄介な病魔に侵されがちです。

「業者に頼めばいいじゃない」

そう思うかもしれません。しかし、実際に業者に見積もりを取ってみると、驚くべき金額を提示されることがあります。「洗浄・下地補修・塗装一式で6万円〜10万円」。足場が必要な場合はさらに跳ね上がります。「たった数メートル、高さ1.5m程度の塀を塗るだけで、家族旅行に行ける金額が飛ぶのか……」と、二の足を踏んでしまう方も多いはずです。

そこで今回は、築年数が経過し、コケと塗膜の膨れに侵された我が家のスタッコ外塀(約8㎡)を、予算1万円以下でDIYリペイントするプロジェクトの全貌を公開します。

これは単なる「塗ってみた」という体験記ではありません。建築士の視点から、「なぜ外塀の塗装は膨れるのか?」「なぜプロはここでフィラーを使わないのか?」といった理論的背景も踏まえ、失敗しないための工程を徹底的に解説する「実録・教科書」です。

Praxis
Praxis

今月はパチンコにお金を使い過ぎてピンチだなも。
自分でやるから教えてほしいだなも!!!

Logico
Logico

仕様がない子ね。単にやり方をレクチャーするだけでなく、なぜそうするのかも併せて解説して、今後も自分で塗装できるように教育してあげるわね。

この記事で分かること

  • 【現状診断】スタッコと吹付タイルの見分け方と、塗料吸い込み量の違い
  • 【メカニズム】なぜ外塀の塗装は「膨れる」のか?背面水の恐怖
  • 【材料選び】ホームセンターの安いアクリル塗料を選んではいけない理由
  • 【プロの計算式】スタッコ壁の「必要塗料」はカタログ値では足りない!
  • 【下地処理】膨れ除去の極意「打音検査」と、コケ取りの「こすらない」正解
  • 【養生の裏技】ザラザラの壁でも剥がれない「ガムテープ」を使ったマスキング術
  • 【塗装のコツ】スタッコの凹凸を攻略する「長毛ローラー」と「吸い込み止め」
  • 【仕上げ】失敗しない養生撤去のタイミングと「ついでリフォーム」
  • 【費用対効果】業者見積もりの1/5~1/10!DIYで浮いた5万円の価値
  1. 第1章:現状診断|敵を知ることから始まる
    1. 1-1. 現状の惨状:コケと膨れの二重苦
    2. 1-2. 外塀の「劣化サイン」全集
    3. 1-3. 【重要】あなたの壁はどっち?スタッコと吹付タイルの見分け方
      1. ① スタッコ(今回の我が家の壁)
      2. ② 吹き付けタイル(ボンタイルなど)
  2. 第2章:戦略と準備|プロの材料選定と計算式
    1. 2-1. なぜ塗膜は膨れるのか?「背面水」の恐怖
    2. 2-2. 塗料選定:ホームセンターの「一番安い塗料」は罠
    3. 2-3. 【プロの計算式】塗料はどれくらい必要か?
    4. 2-4. 道具選定
  3. 第3章:【1日目】破壊と清浄|8割を決める下地処理
    1. 3-1. コケ除去の正解:「こすらない」
    2. 3-2. 膨れ除去の極意:「浮いている所はすべて剥がす」
      1. ポイント①:打音検査(周辺も叩いてチェック)
      2. ポイント②:段差を「ぼかす」
    3. 3-3. 乾燥の鉄則
  4. 第4章:【2日目】養生と固め|テープが貼れない問題の解決
    1. 4-1. 【裏技】ザラザラの壁に養生テープを貼る方法
    2. 4-2. カチオンシーラーの「吸い込み止め」
  5. 第5章:【3日目・4日目】彩りと保護|上塗り工程
    1. 5-1. 塗料の儀式「撹拌(かくはん)」
    2. 5-2. 上塗り1回目:長毛ローラーの威力
    3. 5-3. 上塗り2回目:仕上げの魔法
    4. 5-4. 養生撤去と「ついでリフォーム」
  6. 第6章:結果発表|Before/Afterとコスト分析
    1. Before / After
    2. 驚愕のコストパフォーマンス分析
  7. まとめ:DIYとは「家との対話」である
  8. よくある質問(FAQ)
    1. Q1. 高圧洗浄機がない場合はどうすればいいですか?
    2. Q2. 水性塗料で本当に大丈夫ですか?すぐに剥がれませんか?
    3. Q3. もっと大きなひび割れ(クラック)がある場合は?
    4. 参考文献・外部リソース
    5. 関連記事

第1章:現状診断|敵を知ることから始まる

塗装を始める前に、まずは「敵」を知ることから始めましょう。壁の種類や劣化状況を正しく把握しなければ、適切な塗料も補修方法も選べません。ここでの判断ミスが、後々の「剥がれ」や「塗料不足」に直結します。

1-1. 現状の惨状:コケと膨れの二重苦

こちらが施工前の状態です。

既存塀のbefore写真
スタッコの凹凸に汚れが溜まり、全体的に黒ずんでいます。上部(笠木部分)にはコケがびっしり。
指で押すと「ペコペコ」と凹む、塗膜の膨れ。

一見するとただの汚れに見えますが、よく見ると深刻な問題がありました。

1-2. 外塀の「劣化サイン」全集

外塀には様々な劣化症状が現れます。我が家のケースも含め、代表的な症状を整理しておきましょう。あなたの家の塀もチェックしてみてください。

症状 詳細 我が家の状況 対策
チョーキング 壁を触ると白い粉が付く現象。塗膜の樹脂が劣化し、顔料が粉状になったもの。防水機能が寿命を迎えているサイン。 あり 高圧洗浄して再塗装
塗膜の膨れ 水ぶくれ状に膨らむ。地面からの湿気(背面水)が塗膜を押し上げている状態。 あり 徹底除去&透湿性塗装
コケ・藻 日当たりや風通しの悪い場所に発生。水分を保持してしまうため、下地の劣化を加速させる。 あり 殺菌洗浄(ハイター等)
排気ガス汚れ 黒ずみや油分を含んだ汚れ。塗膜劣化の兆候を示す。塗料の密着を阻害するため、入念な洗浄が必要。 あり 洗浄
ヘアクラック 髪の毛ほどの細いひび割れ(幅0.3mm未満)。塗膜表面の割れであり、構造への影響は少ない。 なし 微弾性フィラーや変性シリコンの刷り込み
構造クラック 幅0.3mm以上の深いひび割れ。躯体まで達している可能性が高い。 なし 要専門業者相談(Vカット補修等が必要)
白華現象(エフロ) コンクリート内部の成分が水分と共に染み出し、表面で白く固まる現象。 なし 酸洗い・洗浄

1-3. 【重要】あなたの壁はどっち?スタッコと吹付タイルの見分け方

塗料の必要量を計算する上で、壁の「肌触り」の特定は極めて重要です。一見似ている「スタッコ」と「吹付タイル」ですが、塗料の吸い込み量が倍以上異なります。以下の特徴で見分けてください。

① スタッコ(今回の我が家の壁)

  • 主成分:セメント + 砂・骨材(石の粒)
  • 質感:【ザラザラ・ガサガサ】
    • 拡大して見ると、小さな石や砂の粒が無数に入っています。
    • 手で触ると、紙やすりやコンクリートのような硬くて痛い感触がします。
    • 強く擦ると指が擦りむけます。
  • 塗装への影響:
    • この無数の「砂粒の隙間」に塗料が猛烈に吸い込まれるため、塗料が大量に必要です。
    • 隙間を埋めるために、シーラーによる下固めが最重要になります。
我が家の塀はスタッコ

② 吹き付けタイル(ボンタイルなど)

  • 主成分:樹脂(プラスチックに近い成分) + 石灰粉
  • 質感:【ツルッ・ヌメッ】
    • 模様(凸部)の表面は、卵の殻やプラスチックのように滑らかです。
    • 凸部が独立した「島」や「水玉」のようになっていることが多いです。
  • 塗装への影響:
    • 表面が滑らかなので、塗料はよく伸び、吸い込みもスタッコほどではありません。
吹付タイルのサンプル画像
Praxis
Praxis

なるほどだなも。
僕の家の壁は、指が擦りむけるほどガザガザした「スタッコ(ヘッドカット仕上げ)」だなも。だから、「塗料をカタログ値の倍は吸う」という覚悟が必要と判断するだなもね。

Logico
Logico

そうよ。ここを見誤ると、作業途中で塗料が足りなくなり、ホームセンターへ走る羽目になるよ。

第2章:戦略と準備|プロの材料選定と計算式

診断が終わったら、次は「処方箋」を作成します。ここで重要なのは、「家の外壁と同じ感覚で塗料を選んではいけない」ということです。

2-1. なぜ塗膜は膨れるのか?「背面水」の恐怖

前回の記事でも触れましたが、外塀は家の外壁とは決定的に違う環境に置かれています。それは「地面と直接接している」という点です。

Logico
Logico

背面水(はいめんすい)のメカニズム:
コンクリートブロックやモルタルで作られた塀は、地面から水分を常に吸い上げています(毛細管現象)。この水分が太陽熱で温められて水蒸気となり、外に出ようとします。しかし、表面に「通気性のない塗膜」があると、出口を塞がれた水蒸気が塗膜を内側から押し上げ、風船のように膨らませてしまうのです。

⚠️ 絶対NG!外塀にやってはいけないこと

家の外壁のひび割れ補修によく使われる「微弾性フィラー」。ゴムのように伸びてヒビを埋める優秀な下塗り材ですが、外塀には絶対に使ってはいけません。

微弾性フィラーは厚いゴムの膜を作るため、湿気を完全に閉じ込めてしまいます。外塀に使うと、高確率で数ヶ月〜1年以内にまた膨れてきます。「ひび割れを埋めたいから」といって安易にフィラーを選ぶのは、DIY初心者が最も陥りやすい罠です。

2-2. 塗料選定:ホームセンターの「一番安い塗料」は罠

DIYコーナーに行くと、数千円で買える「アクリル塗料」が並んでいますが、外塀塗装では選ばないでください。

  • アクリル塗料:安いが、耐久性は3〜5年。すぐにチョーキングや色あせが発生し、塗り直しの手間が増えます。
  • シリコン塗料:価格はアクリル塗料より高価ですが、耐久性は8〜12年。汚れにくさや対候性が段違いです。労力を考えると、コストパフォーマンスが最も良いのがシリコン塗料です。
工程 選定材料 選定理由
下塗り 水性カチオンシーラー
(カンペハピオ)2L
傷んだ下地に浸透してガッチリ固める「接着剤」。フィラーのような厚膜を作らず、一定の透湿性を確保しつつ密着力を高めるために採用。特に「カチオン型」はプラスイオンの力でマイナスイオンを帯びた旧塗膜と強力に結合します。
上塗り ハピオセレクト
(水性シリコン)1.6L×2缶
高耐久なシリコン樹脂塗料。外壁用として実績があり、信頼性が高い。色は上品な「ミルキーホワイト」を選択。

2-3. 【プロの計算式】塗料はどれくらい必要か?

「このペンキは1缶で10㎡塗れます」というカタログの数字。これをスタッコ壁にそのまま当てはめると、間違いなく途中で塗料が足りなくなります。

凹凸の激しい壁面では、表面積が増える分、塗料が多く必要になります。以下の係数を掛けて、実効塗り面積を計算してください。

📌 壁面種類別・塗料計算の係数

カタログ表記の塗り面積 × 係数 = 実際に塗れる面積

  • 平滑な面(サイディングなど): 係数 1.0(そのまま)
  • リシン(砂壁状): 係数 0.7 〜 0.8
  • スタッコ(今回の壁): 係数 0.5 〜 0.6

計算例(我が家の場合):
塗装面積:約8㎡
8㎡ ÷ 係数 0.6 = 約13.5㎡分の塗料が必要

つまり、スタッコ壁を塗るには、平らな壁の約2倍の塗料が必要ということです。今回はこの計算に基づき、1.6L缶(約11〜16㎡用)をギリギリ1缶ではなく、余裕を持って2缶用意しました。余ったら2回塗りを3回塗りにすれば良いだけですが、足りないと作業が中断してしまいます。

2-4. 道具選定

塗装用工具・消耗品類
左から刷毛・ダスター刷毛・コーナー刷毛・長毛ローラー・ローラーハンドル・マスカー・ガムテープ・マスキングテープ・ハサミ
使用工具・消耗品2
カチオンシーラー・バケット用使い捨てバケツ・ローラーバケット
  1. 長毛ローラー(毛丈20mm以上)
    【MVPツール】 これがないと始まりません。スタッコの深い凹凸の奥まで塗料を届けるには、短毛や中毛では不可能です。たっぷりと塗料を含んでくれる長毛タイプが必須です。
  2. ローラーバケット(ネット付き)
    塗料をしごいて量を調整するために必要。100均のバケツでは代用できません。
  3. スクレーパー
    膨れた塗膜を「こそぎ落とす」ための道具。100均のもので十分です。
  4. 養生セット(マスカー、マスキングテープ、ガムテープなど)
    ガムテープの用途は後編で解説しますが、ザラザラな壁には必須アイテムです。
  5. キッチンハイター
    専用のコケ取り剤も売っていますが、成分は次亜塩素酸ナトリウムが主なので、家庭用ハイターで代用可能(※自己責任で、使用後の水洗いは徹底的に)。

第3章:【1日目】破壊と清浄|8割を決める下地処理

いよいよ作業開始です。塗装工事の品質の8割は、この「塗らない日」で決まります。

3-1. コケ除去の正解:「こすらない」

多くの人がタワシでゴシゴシ擦りますが、それは非効率的です。表面のコケは落ちても、スタッコの奥に入り込んだ「根」は残ります。

  1. 殺菌:家庭用ハイター(塩素系漂白剤)を水で3〜5倍に薄め、刷毛やスプレーでコケ部分にたっぷりと塗布します。
  2. 放置:そのまま10分〜15分放置します。これで根まで死滅させます。
  3. 洗浄:水で洗い流します。この時、ゴシゴシ削る必要はありません。
  4. 判断基準:表面の「ヌメリ」が取れていれば合格です。シミ(色素)が残っていても、上から塗装して隠してしまうので問題ありません。

⚠️ 注意:ハイター成分が残ると塗料が変色・密着不良を起こします。これでもかというくらい大量の水で洗い流してください。

3-2. 膨れ除去の極意:「浮いている所はすべて剥がす」

今回のハイライト、膨れ部分の除去です。マイナスドライバーやスクレーパーを差し込むと、パキパキと簡単に割れます。

[画像:膨れた下地の除去.jpg]
気持ちいいほど剥がれますが、同時に「ここまで下地が死んでいたのか」とゾッとします。

ポイント①:打音検査(周辺も叩いてチェック)

「目に見える膨れ」だけを剥がしても不十分です。その周辺をスクレーパーの柄などでコンコンと叩いてみてください。

  • 「カンカン」と硬い音: 密着している。
  • 「ポコポコ」と軽い音: 見た目は普通でも、裏側で剥離している。

この「ポコポコ」という音がする場所を残して塗装すると、新しい塗料の乾燥収縮に引っ張られて、すぐにまた剥がれてきます。「ガッチリ付いていて剥がれない」ところに行き着くまで、容赦なく剥がし広げてください。

膨れている箇所の写真・手前はスクレーパー
膨れた下地の除去

ポイント②:段差を「ぼかす」

塗膜を剥がした跡はクレーターのように凹み、段差が目立ちます。そのまま塗ると「ここを直しました」と言わんばかりの跡が残ります。

サンドペーパー(#80〜#100の粗目)を使って、「残った旧塗膜のフチ」を斜めに削り、なだらかにしてください。指で撫でて、カクッとした段差を感じなくなれば合格です。この一手間で仕上がりがプロ級になります。
※電動工具(グラインダーなど)をお持ちの方は手ではなく工具で研磨すると楽です。

3-3. 乾燥の鉄則

洗浄後は、丸1日以上(冬場なら2日)乾燥させます。

何度も言いますが、外塀の敵は「水分」です。壁の中に水分が残ったまま塗装すると、水分が蒸発する際に塗膜を押し上げ、確実にまた膨れます。「乾いたかな?」ではなく「絶対に乾いている」と確信できるまで待つのがDIYの特権であり、プロにも勝る品質管理です。

第4章:【2日目】養生と固め|テープが貼れない問題の解決

洗浄から丸1日以上(24時間以上)乾燥させました。含水率計で測らなくても、見た目の色が完全に乾いた灰色に戻っていればOKです。
※冬場のため乾燥時間を多くとります。

4-1. 【裏技】ザラザラの壁に養生テープを貼る方法

塗装DIYで最もストレスが溜まる瞬間、それは「せっかく貼った養生テープが、壁のザラザラに負けてペラペラ剥がれてくる時」です。

スタッコやモルタルの立ち上がり部分は砂粒だらけで、繊細なマスキングテープやマスカーは密着しません。そこで登場するのが、準備しておいた「ガムテープ(布テープ)」です。

モルタル立ち上がり面にテープを貼っている写真
マスカーの下に、ガムテープを仕込みます。
モルタル立ち上がり面及びコンクリート地面を養生した写真
モルタル立ち上がり面及びコンクリート地面を養生

最強の養生手順:

  1. ベースを作る: 塗装しない境界線(地面のコンクリートや笠木の裏など)に、粘着力の強いガムテープを先に貼り付けます。指の腹で強く押し付け、しっかりと貼り付けます。
  2. マスカーを貼る: その「ガムテープの背中」に、マスカー(ビニール付きテープ)を貼り付けます。
Praxis
Praxis

名付けてテープ・オン・テープ工法だなもの。これだけで、風が吹いても剥がれない強固な養生が完成するだなも。

Logico
Logico

地面(犬走り)は塗料がボタボタ垂れるので、マスカーのビニールを広めに広げておきましょうね。

4-2. カチオンシーラーの「吸い込み止め」

養生が終わったら、いよいよ1缶目、「水性カチオンシーラー」の登場です。

この工程の目的は、傷んだ下地を固めることと、上塗り塗料の吸い込みを止めることです。特に今回は「塗膜を剥がした箇所」と「既存塗膜の箇所」が混在しているため、塗り方にコツが入ります。

先にカチオンシーラーを膨れ除去部に塗布することで二回塗りにする
先にカチオンシーラーを膨れ除去部に塗布することで二回塗りにする
カチオンシーラーを全体に塗布
カチオンシーラーを全体に塗布

手順:

  1. タッチアップ(最重要):
    膨れを除去して露出したモルタル面は、長年風雨にさらされていない「新鮮でスカスカな面」です。周囲の塗装面よりも猛烈にシーラーを吸い込みます。
    まずはこの「剥がした跡」だけに、刷毛でたっぷりとシーラーを飲ませてください。
  2. 全体塗布:
    タッチアップ部分が乾いたら、壁全体にローラーで塗っていきます。スタッコの凹凸に液だれしないよう注意しながら、かつ奥まで染み込ませるイメージで。

💡 シーラーが効いているサインは「濡れ色」と「艶」

シーラー塗布後、壁が少し濃い色(濡れ色)になり、光を当てるとうっすらと艶が出ていればOKです。
もし、塗ったそばから乾いて白っぽくなってしまう場合は、吸い込みが止まっていません。その箇所だけ「追いシーラー(重ね塗り)」をして、樹脂分で表面を飽和させてください。

第5章:【3日目・4日目】彩りと保護|上塗り工程

5-1. 塗料の儀式「撹拌(かくはん)」

下塗りが完全に乾燥したことを確認し(冬場なので念のため24時間あけました)、上塗りに入ります。色は「ウォームベージュ」を選択。

ここで、塗料缶を開ける前に必ずやってほしい儀式があります。

  1. シェイク: 缶を逆さまにして、バーテンダーのように数回大きく振ります。
  2. ステア: 開封後、棒などで底から「これでもか」というくらい混ぜます。
Logico
Logico

塗料の成分(顔料や樹脂)は、保管中に底に沈殿しています。上澄みだけで塗ると色が薄く、最後の方はドロドロの濃い塗料が出てきて、壁の色がツートンカラーになってしまいますよ。撹拌は塗装の命です!!

5-2. 上塗り1回目:長毛ローラーの威力

バケットにネットをセットし、塗料を注ぎます。ここで長毛ローラーの実力が発揮されます。

スタッコ壁は、無数の「穴」が開いている状態です。短毛ローラーでは表面を撫でるだけで、穴の中まで塗料が入りません。長毛ローラーにたっぷりと塗料を含ませ、「塗る」というより「押し込む」感覚でローラーを転がします。

長毛ローラに塗料をつけて
長毛ローラに塗料塗布
1回目塗装終了
1回目塗装終了時の写真:ややムラがある

1回目のコツ:
完璧を目指さないこと。穴の奥まで塗ろうとすると、どうしても塗り残し(透け)が出ます。1回目は「全体に色を配る」「塗料を吸わせる」工程と割り切り、ムラがあっても気にせず進めましょう。

5-3. 上塗り2回目:仕上げの魔法

4日目(乾燥時間:24時間確保)。いよいよ最後の仕上げです。

1回目で壁の吸い込みが止まっているため、2回目は驚くほどスルスルとローラーが動きます。この段階で、塗りムラを消し、塗膜に均一な厚みを持たせます。

スタッコの山(凸部)だけでなく、谷(凹部)にもしっかり塗料が乗っていることを確認しながら、丁寧に仕上げていきます。

5-4. 養生撤去と「ついでリフォーム」

全て塗り終わったら、塗料が「半乾き」の状態のうちに養生テープを剥がします。

⚠️ 注意:完全に乾いてから剥がさない!

塗料がカチカチに固まってからテープを剥がすと、テープと一緒にせっかく塗った壁の塗膜までバリバリと持っていかれることがあります。手につかない程度に乾いたら、早めに、かつ慎重に剥がすのがプロのコツです。

そして最後に、紫外線でボロボロに割れていたポストの蓋も新品(Panasonic CT651101L)に交換!

交換する前のポストの写真
交換前のポストの写真
交換後のポストの写真
交換後のポストの写真。ドライバー1本で交換可能。
Praxis
Praxis

塗装が綺麗になってもポストの蓋が壊れたままではみっとものないだなも。ついでに直しておくだなも!!

Logico
Logico

ポスト本体などに品番が記載されていることが多いです。それを撮影しておき、ネットで調べて購入しましょう。

第6章:結果発表|Before/Afterとコスト分析

4日間にわたる戦いが終わりました。その成果をご覧ください。

Before / After

既存塀のbefore写真
Before:コケと黒ずみで暗い印象。
After:明るく、清潔感のある外観に!

段差をサンドペーパーでぼかし、タッチアップで吸い込みを止めてから塗装したため、違和感なく馴染んでいます。コケも根絶され、新築のような輝きを取り戻しました。

ステンレスのポストと新しい塗膜のコントラストが美しい。植栽の緑も映えます。

驚愕のコストパフォーマンス分析

今回のプロジェクトにかかった費用を、業者に依頼した場合の想定費用と比較してみます。

項目 DIY費用(実績) 業者依頼(想定) 節約額
塗料代 約7,000円 (材料工賃込)
道具・消耗品 約3,000円 (諸経費込)
合計 約10,000円 約60,000円〜 約50,000円~

なんと、約1/5以下の費用で済みました。浮いた5万円があれば、家族と旅行に行けますし、美味しい食事も何回も楽しめます。

もちろん、自分の労力と時間はかかっています(実働時間は約10時間程度)。しかし、時給換算で約5,000円の仕事をしたと思えば、これほど割の良い「副業」はないのではないでしょうか。

Logico
Logico

これからも沢山働いて、我が家を綺麗にしてね。期待しているわよ。

Praxis
Praxis

貧乏暇なしだなも。パチンコに行きたいだなも。

まとめ:DIYとは「家との対話」である

今回の外塀塗装を通じて、私が強く感じたことがあります。

それは、「家の痛みは、手で触れて初めて分かる」ということです。

遠目にはただ汚れているだけに見えた壁も、スクレーパーで触れることで「ここは湿気が溜まりやすいんだな」「ここは日が当たらないからコケるんだな」と、その原因まで理解できました。ただ業者にお金を払って直してもらうだけでは、この「気づき」は得られなかったでしょう。

DIYの価値は、単なるコストカットだけではありません。自分で手をかけることで、家への理解が深まり、愛着が湧く。そして、次に何かあったときも「また自分で直せる」という自信に繋がります。

もし、あなたの家の外塀が少し疲れた顔をしているなら、ぜひ次の週末、スクレーパーとローラーを手に取ってみてください。きっと、家も喜んでくれるはずです。

📚 基礎知識を復習したい方はこちら
今回の実践のベースとなった「知識編」はこちら。塗料の種類の違いや、より詳しい下地処理の理論を解説しています。
【保存版】外壁塗装DIYの完全ガイド|失敗しない塗料選びと部位別の塗装戦略を建築士が徹底解説

よくある質問(FAQ)

Q1. 高圧洗浄機がない場合はどうすればいいですか?

A. デッキブラシとホースの水でも十分綺麗になります。その場合もハイターなどのコケ取り剤を併用し、しっかりと擦り洗いしてください。重要なのは洗浄方法よりも「その後の乾燥時間」です。高圧洗浄機を使った場合よりも水切れが悪い場合があるので、しっかり乾燥させてください。

Q2. 水性塗料で本当に大丈夫ですか?すぐに剥がれませんか?

A. 近年の水性シリコン塗料は非常に高性能で、油性塗料に匹敵する耐久性を持っています。むしろ、外塀のように湿気を含む箇所では、油性よりも水性の方が透湿性があり、膨れのリスクを下げられるメリットがあります。DIYでは臭いが少なく扱いやすい水性を強く推奨します。

Q3. もっと大きなひび割れ(クラック)がある場合は?

A. 幅0.3mm未満のヘアクラックなら、今回のカチオンシーラーとシリコン塗料の厚塗りで埋まります。それ以上の幅がある場合は、塗装前に「変成シリコンコーキング」などを擦り込んで埋める必要があります。名刺が入るような深いクラック(構造クラック)の場合は、一度専門家に見てもらうことをお勧めします。

参考文献・外部リソース

関連記事

カーメンテナンスや修理、DIY塗装の基礎となる知識をさらに深めたい方は、以下の記事もぜひご覧ください:

タイトルとURLをコピーしました