About n=1 Lab.

森の中でDIYをするPRAXIS
管理人ついて

PRAXIS – n-1 Lab. 主宰

信条
理論と実践の往復運動。思考を行為に、行為を思考に。抽象と具体のループを回す。

専門領域
理論(Theory): 現代思想、哲学、社会構造分析
実践(Practice):建築設計(リフォーム)、IT・電子工作、DIY

経歴:京都大学理学部卒
保有資格
二級建築士 / 宅地建物取引士 / 管理業務主任者 / 基本情報技術者(FE) / マンションリフォームマネージャー / 簿記2級 / 一級小型船舶士 /
※取得中第二種電気工事士
趣味
美術鑑賞 / リサイクル / 読書

はじめに:これは、世界との関わり方を再設計する、n=1の公開実験室です

はじめまして。管理人のPRAXISです。

私たちは、加速し続ける時代に生きています。
社会は「他者と違え」と差異化を強制し、市場は「もっと、次を」と新たな消費を促す。
その結果、私たちは自らの生を味わう暇もなく、無限の競争と更新のループの中で、精神と身体をすり減らしています。

この実験室『n-1 Lab.』は、その構造的疲弊から脱出し、人間が本来持つべき「世界との手触りのある関係性」を再構築するための、思考と実践の全記録です。

これは、社会のノイズを解体する「マイナスからゼロへ」の試みであると同時に、自らの手で世界と接続し、創造する喜びを分かち合う「ゼロからプラスへ」の探求でもあります。

所有によって自分を定義する「持つこと(To Have)」の様式から、自らの内なる力を能動的に表現する「在ること(To Be)」の様式へ。

その移行の全プロセスを、ここに公開します。

消費することの特質は多義的である。
すなわちそれはまず不安を除いてくれる。というのは、持っているものを奪われることはありえないからである。しかし、それはまたより多く消費することをも要求する。というのはさきの消費はすぐにその欲求充足的性格を失うからである。
現代の消費者は次の定式で自分を確認するだろう。

私はある = 私が持つものおよび私が消費するもの。
—— エーリッヒ・フロム『生きるということ』

Methodology:n-1 Lab.の基本原則

本研究室の活動は、以下の三つの基本原則に基づき、領域横断的に実践されます。

1. 身体性の再統合 — 思考は、手から生まれる

専門化の果てに、私たちは思考と身体を切り離してしまいました。しかし、道具を手に取り、世界と格闘することで初めて思考が生まれるのであれば、身体性を失った思考は現実から乖離し、空洞化します。

「建築家の実務は、製作(ファブリカ)と理論(ラティオキナティオ)から生まれる。製作とは、継続的で熟練した実践の省察であり、設計構想に適した材料を用いて手によって成し遂げられるものである。理論とは、製作されたものを、技巧と理性の比例によって論証し説明できるものである。」
—— ウィトルウィウス『建築十書』第一書、第一章
(原文:Fabrica est continuata ac trita usus meditatio, quae manibus perficitur. Ratiocinatio autem est, quae res fabricatas sollertiae ac rationis proportione demonstrare atque explicare potest.

この古代の建築家は、「手だけで働く者は権威を持てず、理論だけに頼る者は影を追うのみ。両方を学んだ者だけが、あらゆる武器を備えた者として目的を達成する」と続けます。本研究室では、建築、DIY、電子工作といった「手の実践」を、あらゆる思考の根源に据えます。

2. 存在的差異の探求 — 比較の呪縛から、経験の豊かさへ

現代社会は、他者との比較を前提とした「社会的差異」の生産を強制する装置と化しています。本研究室が探求するのは、それとは全く異なる「存在的差異」——光と影、季節の移ろい、素材の手触りといった、比較不能な「いま・ここ」にしかない世界の豊かさです。

この感覚の回復こそが、消費社会のループから降りるための第一歩だと考えます。

3. 有限な実践への回帰 — 百姓的生の実践

「あるべき理想」を追い求め無限に反省するのではなく、目の前にある一つひとつの具体的なタスクに、有限な存在として向き合うことの連続こそが生です。

「有用な労働と無用な労働の区別を消し去ること、それが芸術家の目指すべきものである。」
—— ウィリアム・モリス『ユートピアだより』

これは、専門家として社会の「部品」になることを拒み、生活と労働を一致させ、複数のスキルを実践する「百姓的な生き方」に通じます。その実践の中にこそ、「用」と「美」が不可分に結びついた充足した生が再構築されると確信しています。

「木の色といい木目といい実に美しく、そしてよく働くやうになりました。じつは使う人が無心にこれを取扱うその取扱い方が自然で無理がないために美しくなり、働くようになるのだと言うてよいでしょう。美は用の中から生まれてくるのであります。」
—— 柳宗悦『工芸の道』

Contents:n-1 Lab.の研究テーマ

環境(空間・道具・システム)の自作

「自分に合わない」既にある環境を分析し、自分仕様に改善するための知識・設計手法・製作技術について解説しています。特に空間、道具(ハードウェア)、システム(ソフトウェア)という主要なカテゴリーでの製作を実践していきます。
#建築 #DIY #修理 #電子工作 #プログラミング

思考の全記録

世界の実相を客観的に理解し直すことで、「私はなぜそうしないといけないのか」を明らかにします。ここで環境を自作するための基本方針を綿密に考えていきます。

その他、同じような悩みを持つ方々に役に立つ考え方を紹介しています。
#哲学/思想 #知識整理 #書評 #レビュー #ライフハック

Deliverables:本研究室で提供するもの

このラボは、完成品のショールームではありません。思考と試行錯誤の全プロセスを共有する、開かれた実験ノートです。

  • 一次情報としての実践記録
    AIには生成不可能な、現場の写真、失敗のログ、そして身体を通した考察。
  • 再現可能な設計思想
    あなたが実践に応用可能な、具体的な設計手法、製作プロセス、思考のフレームワーク。
  • 知的コンパス
    なぜそうするのか? 現代社会を生き抜くための、参考文献に裏打ちされた哲学的な視点と道具。

これは、単なる情報提供ではありません。あなたの手で、あなたの「n-1」の世界を再構築するための、思考と実践のOS(オペレーティングシステム)を共有する試みです。

コンテンツの構成について

このサイトのコンテンツは、大きく分けて2種類あります。

【ハブ記事】
一つの大きなテーマ(例:書斎のDIY、自宅のIoT化)を、構想から完成まで網羅的に記録した、当ラボの研究成果です。
【スポーク記事】
ハブを構成する過程で生まれた、日々の小さな発見、ツールのレビュー、失敗談などを記録した、実験ノートです。

さいごに

これらの取り組みを通じて、PRAXISが提供する価値は、単なる知識の提供だけでなく、参加者の自立した学びを促進することであると考えています。私たちの実験室が、あなたの創造的な旅の一助となることを願っています。

最新の実験状況はX(旧Twitter)で発信しています。ぜひ、この実験室のオブザーバーになってください。

– PRAXIS


知的基盤となる参考文献(References)

  • ハイデガー, M. (1927). 『存在と時間』(原著: Sein und Zeit)
    熊野純彦訳、岩波文庫、2013年
  • ハイデガー, M. (1951). 「建てる 住まう 考える」(原著: “Bauen Wohnen Denken”)
    収録: 『技術への問い』関口浩訳、平凡社ライブラリー、2009年
  • フロム, E. (1976). 『生きるということ』(原著: To Have or to Be?)
    佐野哲郎訳、紀伊國屋書店、1977年
  • ドゥルーズ, G. (1968). 『差異と反復』(原著: Différence et répétition)
    財津理訳、河出書房新社、2007年
  • 浅田彰 (1983). 『構造と力—記号論を超えて』勁草書房
  • 千葉雅也 (2022). 『現代思想入門』講談社現代新書
  • 國分功一郎 (2011). 『暇と退屈の倫理学』朝日出版社(増補新版: 太田出版、2015年)
  • 養老孟司 (2003). 『バカの壁』新潮新書
  • ウィトルウィウス (紀元前1世紀). 『建築十書』(原著: De architectura)
    • 森田慶一訳『ウィトルーウィウス建築書』東海大学出版会、1969年
    • 英訳: Morris Hicky Morgan訳、Harvard University Press、1914年
  • 柳宗悦 (1928). 『工藝の道』グロリア・ソサエティ(初版)
    • 『工藝の道』講談社学術文庫、2005年
    • 収録: 『柳宗悦コレクション2 もの』ちくま学芸文庫、2011年
  • 柳宗悦 (1941). 『民藝とは何か』
    講談社学術文庫、2006年
  • モリス, W. (1890). 『ユートピアだより』(原著: News from Nowhere)
    川端康雄訳、岩波文庫、2013年
  • 伊藤洋志 (2012). 『ナリワイをつくる—人生を盗まれない働き方』東京書籍
  • pha (2015). 『持たない幸福論—働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』幻冬舎
  • アンダーソン, C. (2012). 『MAKERS—21世紀の産業革命が始まる』(原著: Makers: The New Industrial Revolution)
    関美和訳、NHK出版、2012年
  • 鴨長明 (1212年頃). 『方丈記』
    蜂飼耳訳、河出文庫、2011年
  • ニーチェ, F. (1883-1885). 『ツァラトゥストラはこう語った』(原著: Also sprach Zarathustra)
    氷上英廣訳、岩波文庫、1967年

注: 上記は主要な参考文献です。正確な書誌情報は各著作をご確認ください。


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