【実践編】ユーザー車検前の定期点検を自分でやってみた|DIYメンテナンスのススメ

車いす競争の写真 知識整理
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地上のあらゆる道具や機械は、人間の手足や感覚の延長にすぎない

ラルフ・ワルド・エマーソン
  1. はじめに:なぜ自分で点検するのか?
    1. DIYメンテナンスの3つのメリット
  2. 第1章:点検の準備|車両スペックと必要な工具
    1. 1-1. 今回使用した車両スペック
    2. 1-2. 揃えた工具リスト(初期投資編)
  3. 第2章:エンジンルーム内の点検
    1. 2-1. 液類のチェック(難易度:★☆☆ | 作業時間:15分)
      1. ブレーキフルード
      2. エンジンオイル
      3. 冷却水(クーラント液)
      4. ウォッシャー液
      5. バッテリー液
    2. 2-2. エアクリーナーエレメントの確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)
    3. 2-3. ベルト類の張り具合確認(難易度:★★☆ | 作業時間:5分)
    4. 2-4. バッテリーの固定確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:5分)
  4. 第3章:室内点検
    1. 3-1. 操作系の確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)
      1. ハンドルの遊び
      2. ブレーキペダルの踏みしろ
      3. パーキングブレーキの引きしろ
    2. 3-2. 発炎筒の有効期限切れ発見!(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)
      1. LED式発炎筒に交換
    3. 3-3. その他の室内チェック
  5. 第4章:外回り点検
    1. 4-1. ライト類の点灯確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)
      1. 一人で確認する裏ワザ
      2. 確認項目と結果
    2. 4-2. ヘッドライト光軸の簡易測定(難易度:★★☆ | 作業時間:30分)
      1. 測定方法
    3. 4-3. 灯火類カバー・ボディの損傷確認
  6. 第5章:タイヤ・足回り点検
    1. 5-1. タイヤの状態確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:各輪5分)
      1. 空気圧チェック
      2. 溝の深さ測定
      3. 亀裂・損傷チェック
    2. 5-2. ブレーキパッドの残量確認(難易度:★★☆ | 作業時間:各輪10分)
      1. 測定方法
      2. 測定結果
    3. 5-3. 足回り部品の目視点検(難易度:★★★☆ | 作業時間:各部位5-10分)
      1. ホイールナットの緩み確認
      2. ドライブシャフトブーツ・ステアリングシャフトブーツ
      3. ショックアブソーバー
      4. マフラー
      5. エンジンオイル漏れ
      6. ブレーキホース
  7. 第6章:自分で交換した消耗品の記録
    1. 6-1. エンジンオイル&フィルター交換(難易度:★★☆)
      1. 使用材料
      2. 作業手順(概要)
      3. 廃油処理の方法
      4. プロ依頼との比較(オイルフィルター交換込み)
    2. 6-2. バッテリー交換(難易度:★★☆)
      1. 交換の判断基準
      2. 使用バッテリー
      3. 作業手順(概要)
      4. プロ依頼との比較
    3. 6-3. その他の補充・交換
      1. クーラント液補充(難易度:★☆☆)
      2. ウォッシャー液補充(難易度:★☆☆)
      3. ワイパーゴム交換(難易度:★☆☆)
      4. タイヤ交換(1年前実施)(難易度:★★★☆)
      5. スパークプラグ交換(1年半前実施)(難易度:★★★☆)
  8. 第7章:コスト分析|DIYの経済効果
    1. 7-1. 初期投資(工具類)
    2. 7-2. ランニングコスト比較(5年間)
    3. 7-3. 投資回収期間
  9. 第8章:DIYメンテナンスで得られたもの
    1. 8-1. 技術的な成長
    2. 8-2. 精神的な安心感
    3. 8-3. 身体の延長としての「車」:脳科学が証明する実感
    4. 8-4. 挑戦してわかった限界
      1. 難しかった作業ランキング
      2. プロに依頼する予定の項目
  10. 第9章:【重要】DIYとプロのバランス
    1. 9-1. 私が決めた役割分担
    2. 9-2. プロの技術への敬意
  11. まとめ:DIYメンテナンスは「手段」であり「目的」ではない
    1. この記事のポイント
    2. 参考文献・外部リソース
    3. 関連記事
  12. 付録:使用材料・工具の完全リスト
    1. 消耗品
    2. 工具類

はじめに:なぜ自分で点検するのか?

ユーザー車検を受ける前に、「自分の車は本当に安全か?」という疑問を持つのは当然です。でも、多くの人は車の状態を確認せずに、いきなり検査場に向かってしまいます。

私は今回、ダイハツ ミラ イース LA300S(走行距離80,000km)のユーザー車検を受けるにあたり、事前に自分で定期点検レベルの確認を実施しました。

この記事では、実際の点検作業の全記録を、成功も失敗も含めて正直にお伝えします。

praxis
praxis

ユーザー車検や点検の基礎知識については、こちらの記事で詳しく解説していますので、まずはそちらをご覧ください。

DIYメンテナンスの3つのメリット

メリット詳細
① 経済的メリット年間約12,000円の節約。工具の初期投資は約2年で回収可能
② 愛車の正確な把握普段との音や振動、匂いの違いに気づき、トラブルを早期発見できる
③ 技術と自信の獲得車の仕組みがブラックボックスからホワイトボックス化し、整備工場との対話もスムーズに

第1章:点検の準備|車両スペックと必要な工具

1-1. 今回使用した車両スペック

車種ダイハツ ミラ イース LA300S
年式2013年式
走行距離80,000km
エンジンKF-VE型 658cc 直列3気筒DOHC
前回車検2年前(66,300km時点)

1-2. 揃えた工具リスト(初期投資編)

DIYメンテナンスには初期投資が必要ですが、一度揃えれば長く使えます。

工具名価格汎用性備考
ガレージジャッキ
(Kaitou 油圧式 2.5t)
約6,000円★★★最低位85mm、ローダウン対応
※ご自身のお車に合わせてお選びください。
ジャッキスタンド
(Emerson 3t 2個セット)
約2,500円★★★6段階高さ調整、ラバーパッド付
トルクレンチ
(アクアドリーム ATD-210)
約3,500円★★★28~210N·m、ソケット付属
※やや高価ですがデジタル式の方が分かりやすくて良いかもしれません。
エアコンプレッサー
(AstroAI 150PSI)
約3,500円★★☆LEDライト付、自動停止機能
オイルフィルター用レンチ
(PIAA W65)
約1,000円★★☆トルクメーター付き
※ご自身のお車に合わせてお選びください。
オイルジョッキ
(AZ 2L)
約500円★★☆フタ&こし網付き
T型スライドソケットハンドル
(SK11 STS-325S)
約1,000円★★★差込角9.5mm
プラグソケット約500円★☆☆12mm角 差込角9.5mm
※スパークプラグ交換用に購入
その他工具
(クロスレンチ、コンビネーションレンチなど)
約1,500円★★★既存工具の補充
※必要になった時に買い足すと無駄がないと思います。
合計約20,000円

汎用性評価の見方

  • ★★★:他の作業でも頻繁に使用(投資価値高)
  • ★★☆:時々使用(あると便利)
  • ★☆☆:この作業専用(専用性高)

第2章:エンジンルーム内の点検

エンジンルームは、車の「心臓部」です。ここの液類が不足していると、重大なトラブルにつながります。

2-1. 液類のチェック(難易度:★☆☆ | 作業時間:15分)

日常点検の基本中の基本です。各液類のタンクには「MAX」と「MIN」のラインがあり、その間に液面があればOKです。

ブレーキフルード

チェック結果:MAX-MIN間、問題なし
前回交換:2年前(車検時)
注意点:液が茶色く変色している場合は要交換。ブレーキフルードは水分を吸収しやすく、沸点が下がるため定期交換が必須。

ブレーキ液の確認

エンジンオイル

チェック方法:レベルゲージを引き抜き、拭いてから再度差し込んで引き抜く
結果:H-L間の中間、良好(直近で交換済み)
使用オイル:モリグリーン セレクション 0W20 SP/GF-6A
交換サイクル:毎年11月(約10,000km)

オイル診断写真
Teacher X
Teacher X

エンジンオイルは「エンジンの血液」です。量だけでなく、色も確認しましょう。真っ黒になっていたら、交換時期のサインです。

冷却水(クーラント液)

結果:FULL-LOW間、やや減少
対応:古河薬品工業 ラクラククーラント-40C(赤)を補充
費用:700円(2L)

クーラント液の確認

ウォッシャー液

結果:やや減少
対応:市販のウォッシャー液を満タンまで補充
費用:約500円

ウォッシャー液とブレーキフルード液の注ぎ口
左のキャップがウォッシャー液補充口。右がブレーキ液補充口。

バッテリー液

結果:メンテナンスフリーバッテリーのため確認不要(直近に交換した新しいバッテリー)
注意:古いタイプのバッテリーは液量確認が必要

2-2. エアクリーナーエレメントの確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)

エンジンが吸う空気をろ過するフィルターです。LA300Sの場合、エンジンルームにあるボックスを開けると確認できます。

状態:やや汚れあるが許容範囲と判断
判断基準:真っ黒または破れていなければOK
交換目安:50,000kmごと

エアクリーナー

2-3. ベルト類の張り具合確認(難易度:★★☆ | 作業時間:5分)

補機ベルト類(エンジン側面)の張り具合を確認します。
エアコンのコンプレッサーを駆動するベルト、ウォーターポンプ、オルタネーターを駆動するベルトの2本あります。

方法:ベルトの中央を指で押さえて、約10mm程度たわむか確認
結果:適正な張り具合
注意:たわみすぎる場合は張り調整または交換が必要

補機ベルトx2

2-4. バッテリーの固定確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:5分)

確認項目:

  • 固定金具の緩みがないか
  • 端子の緩みがないか
  • 腐食(白い粉)がないか

結果:すべて問題なし

バッテリーの確認

第3章:室内点検

3-1. 操作系の確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)

ハンドルの遊び

確認方法:エンジンを止めた状態で、ハンドルを左右に軽く動かす
基準:5~10mm程度の遊びがあればOK
結果:問題なし

ブレーキペダルの踏みしろ

確認方法:エンジンをかけた状態で、ブレーキペダルをゆっくり踏み込む
基準:床板とのすき間が十分にあり、踏みごたえがしっかりしている
結果:踏みしろ十分、フワフワ感なし

パーキングブレーキの引きしろ

確認方法:「カチカチ」という音の数を数える
基準:7~9ノッチ程度
結果:8ノッチ、適正範囲

3-2. 発炎筒の有効期限切れ発見!(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)

助手席のグローブボックスを開けて発炎筒を確認したところ、有効期限が2年前に切れていました。これは車検で不合格になる項目です。

LED式発炎筒に交換

使用製品:エーモン(amon) 非常信号灯 6904
費用:約600円
特徴:

  • 車検対応(防滴仕様IPX3相当)
  • ON/OFFスイッチタイプで繰り返し使用可能
  • 有効期限なし(電池交換式)
非常用発炎筒
左が有効期限切れのもの。右が新しいLED式のもの。

LED式発炎筒のメリット

  • 有効期限を気にしなくて良い
  • 火を使わないため車内での保管も安心
  • 繰り返し使用できて経済的
  • 風雨に強い

3-3. その他の室内チェック

  • ホーン(クラクション):正常に作動
  • ワイパー&ウォッシャー:拭き取り正常、噴射位置適正(ワイパーも直近で交換済み)
  • 警告灯:エンジン始動後、すべて消灯
  • 窓ガラス:ひび割れ・損傷なし

第4章:外回り点検

4-1. ライト類の点灯確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:10分)

一人で確認する裏ワザ

通常、ライト類の確認は二人で行いますが、一人でも確認できる方法があります。

方法:

  1. スマホを三脚またはスマホスタンドに固定
  2. 車の後方(または前方)から撮影できる位置に設置
  3. 動画撮影を開始
  4. 運転席で各ライトを操作
  5. 撮影した動画で点灯を確認

確認項目と結果

項目結果
ヘッドライト(ロー/ハイ)正常点灯
スモールランプ(車幅灯)正常点灯
ウインカー(前後左右)正常点滅
ブレーキランプ正常点灯
バックランプ正常点灯
ナンバー灯正常点灯
フォグランプ装備なし

4-2. ヘッドライト光軸の簡易測定(難易度:★★☆ | 作業時間:30分)

ヘッドライトの光軸がズレていると、車検で不合格になります。簡易的に自分で確認する方法を試しました。
※あくまで目安程度です。正確性を求める場合はテスター屋などのプロに依頼してください。

測定方法

  1. 車の状態を標準的な状態に設定する
    ・タイヤの空気圧を4輪とも規定値に合わせる
    ・車内の不要な重い荷物は降ろす
    ・ガソリンは半分以上入っているのが望ましい
    ・運転席に誰かに乗ってもらうか、自分の体重に近い重りを乗せるとより正確
  2. 夜中に平坦でヘッドライトを当てるための垂直な壁がある場所に移動
  3. 車を壁に真正面に向け、バンパーが壁に付くギリギリまで前進
  4. 壁に、左右のヘッドライトの中心(バルブの真ん中)の高さを測り、その位置にマスキングテープで「+」の印を2箇所つける
  5. ハンドルをまっすぐにしたまま、車を正確に10メートル後退
  6. ヘッドライト(ロービーム)を点灯
  7. 壁に映った光の形を確認
    ※日本の車は左側通行用なので、光と影の境界線(カットオフライン)は、” ̄\_“という形になっています。
  8. 左右のライトの高さやズレを測定し範囲内にあるか確認
    ※基準については下記の図解イラストを参照
    ※その他に光度(6,400cd以上)色温度(6,000K前後の白)などの要件もあるため、
    心配な場合は白色LEDなどに交換推奨

簡易測定結果:

  • 中心高さからの距離:下向き約100mm(基準内)
  • 左右幅:±100mm以内(基準内)
光軸を簡易診断
簡易検査の際のカットラインの写真

費用を抑える戦略

あくまで素人の簡易測定なので、車検で不合格になった場合にテスター屋で調整するという戦略を採用しました。テスター屋での光軸調整は3,000円~5,000円程度です。事前に調整してもらうと5,000円以上かかることが多いため、まずは自分で確認し、必要なら車検当日に調整してもらう方が経済的と判断しました。

4-3. 灯火類カバー・ボディの損傷確認

第5章:タイヤ・足回り点検

ここからは本格的な点検に入ります。ジャッキアップが必要なため、安全確保が最優先です。

ジャッキアップ時の安全対策

  • 必ず平らで固い地面で作業
  • パーキングブレーキをかける
  • 対角のタイヤに輪止めを設置
  • ジャッキアップ後は必ずジャッキスタンドを使用(ジャッキだけで支えない)
  • 車の下に潜る際は、万が一に備えて頭部を保護

5-1. タイヤの状態確認(難易度:★☆☆ | 作業時間:各輪5分)

空気圧チェック

使用機器:AstroAI エアコンプレッサー 150PSI
規定値:前輪 260kPa、後輪 260kPa(LA300S標準)
※タイヤの空気圧やサイズに関する情報はセンターピラー自動車の左右中央部にあるドアを保持する柱に貼ってあるシールで確認できることが多いです。車体の色番号なども同様に確認できます。

タイヤ位置測定値調整後
左前225kPa260kPa
右前230kPa260kPa
左後235kPa260kPa
右後228kPa260kPa

結果:全体的にやや低めだったため、規定値まで補充

溝の深さ測定

使用工具:ノギス
測定方法:タイヤの3箇所(外側・中央・内側)の溝深さを測定し、平均値を算出

タイヤ位置外側中央内側平均
左前6.2mm6.5mm6.0mm6.2mm
右前6.0mm6.3mm5.8mm6.0mm
左後6.3mm6.5mm6.1mm6.3mm
右後5.9mm6.2mm5.7mm5.9mm

全タイヤ平均:6.1mm
スリップサイン確認:すべて余裕あり(法定限界1.6mm、推奨交換4mm
判断:5,000~8,000km/年の走行を想定すると、あと2~3年は使用可能と判断

亀裂・損傷チェック

  • サイドウォールの状態:良好(細かいひび割れのみ、深い亀裂なし)
  • 異物の刺さり:なし
  • 偏摩耗:なし(均等に摩耗)

5-2. ブレーキパッドの残量確認(難易度:★★☆ | 作業時間:各輪10分)

ブレーキパッドは、車検では直接チェックされませんが、残量が少ないと制動力が低下し、ディスクローターも傷めます。

測定方法

  1. タイヤを取り外す
  2. ブレーキキャリパー越しにパッドを確認
  3. ノギスでパッド全体(ベース部分+パッド部分)の厚みを測定
  4. ベース部分のみの厚みを測定
  5. 差分を算出してパッド部分の厚みとする
ディスクブレーキ
ベース部分+パッド部分の測定
ベース部分の測定
praxis
praxis

パッド部分のみにノギスを直接差し込めなかったため、差分で測定する方法を採用しました。そのため、誤差は通常より大きくなっている可能性があります。より正確に測定するには、キャリパーを外す必要がありますが、締め付けが固く、プロに任せるべき作業と判断しました。

測定結果

タイヤ位置平均
左前7.1mm
右前6.9mm
左後(ドラム)目視不可
右後(ドラム)目視不可

前輪平均:7.0mm
交換目安:残り3mm以下
判断:まだ余裕あり、あと2~3万kmは使用可能

後輪:LA300Sはリアがドラムブレーキのため、目視での確認が困難。プロに依頼して点検予定。

2箇所のサービスホールにボルトを差し込み、時計回りに回すと外せるようですが、今回は安全を考慮し未実行

5-3. 足回り部品の目視点検(難易度:★★★☆ | 作業時間:各部位5-10分)

ホイールナットの緩み確認

使用工具:トルクレンチ(アクアドリーム ATD-210)
規定トルク:103N·m(LA300S標準)
方法:トルクレンチをセットし、各ナットが規定トルクで締まっているか確認
結果:すべて適正

ドライブシャフトブーツ・ステアリングシャフトブーツ

確認項目:

  • ブーツの破れ・亀裂
  • グリス漏れ
  • バンドの緩み

結果:すべて問題なし

左からステアリングシャフトブーツ、ストラット、ドライブシャフトブーツ
ドライブシャフトブーツ
ステアリングシャフトブーツ
Teacher X
Teacher X

ブーツ関連は車検時によく指摘される事項です。破れや亀裂などがないかよく確認しておきましょう。

ショックアブソーバー

確認項目:

  • オイル漏れ(濡れた跡)
  • 損傷・錆
  • 取り付け部の緩み

結果:オイル漏れなし、固定良好

前輪のストラット(ショックアブソーバとコイルスプリングが一体となったもの)
後輪はトーションビーム式サスペンション
コイルスプリング(左)とショックアブソーバ(右)

マフラー

確認項目:

  • 穴あき・腐食
  • 固定部の緩み・脱落
  • 接触音(走行中の異音)

結果:錆が出ているが穴は開いておらず異音もしないため問題なしと判断(要経過観察)

エンジンオイル漏れ

確認箇所:

  • オイルパン
  • ドレンボルト周辺
  • オイルフィルター

結果:目視で漏れなし

オイルエレメント、補機ベルト、オイルパンなどが見える

ブレーキホース

確認項目:

  • 亀裂・損傷
  • 液漏れ
  • 膨らみ(劣化のサイン)

結果:すべて問題なし

ブレーキホース(ブーツの手前に写っているホース)

第6章:自分で交換した消耗品の記録

ここでは、過去に自分で交換した消耗品について、作業内容と費用対効果を紹介します。

6-1. エンジンオイル&フィルター交換(難易度:★★☆)

実施時期:毎年11月(私は毎年決まった時期に、5000~10,000kmごとに実施しています)
※軽自動車は普通自動車に比べて非力なため(排気量660cc以下と小さいため)、減速比が大きく、エンジンの回転数が高くなる傾向にあります。そのため、オイルの交換時期も軽自動車の場合は、普通自動車より短い方が好ましいです。
作業時間:初回60分 → 慣れて30分
費用:約3,000円/回

使用材料

  • エンジンオイル:モリグリーン セレクション 0W20 SP/GF-6A 全合成油 3L – 2,500円
  • オイルフィルター:アストロプロダクツで購入 500円
  • ドレンボルトガスケット:アストロプロダクツせ購入 150円

作業手順(概要)

  1. 車をジャッキアップし、ジャッキスタンドで固定
  2. オイルパンの下に廃油受けを設置
  3. ドレンボルトを緩めて古いオイルを排出
  4. オイルフィルターをレンチで取り外す
  5. 新しいフィルターに薄くオイルを塗布し取り付け
  6. ドレンボルトを新しいガスケットで締める(手締め後、適正トルクで締める)
  7. 新しいオイルを注入(LA300Sは2.7~2.9Lで調整)
  8. エンジンをかけて油圧を確認
  9. レベルゲージで油量を確認し、必要なら追加
廃油中
オイルフィルター交換中
オイル注入中

【重要な反省点】トルクレンチの使用

記事を製作中に気づいたことがあります。私はドレンボルトの締め付けを自分の力加減でやっていましたが、これは本来、トルクレンチで規定トルク(LA300Sは30N·m)で締めるべきでした。

締め過ぎのリスク:ネジ山の破損、オイルパンの変形
締め不足のリスク:走行中のオイル漏れ、エンジン故障

次回からは必ずトルクレンチで規定トルクで締めます。この記事を読んでいる皆さんも、ぜひトルクレンチを使用してください。

廃油処理の方法

段ボール箱に新聞紙を詰めたビニール袋を入れ、そこに廃油を吸わせます。完全に固まったら、燃えるゴミとして自治体の規則に従って排出します。
※必ず自治体の指定に従って廃棄してください。

プロ依頼との比較(オイルフィルター交換込み)

依頼先費用節約額
ディーラー約6,000円から3,000円
カー用品店約4,000円から1,000円
DIY3,000円
praxis
praxis

オイルのグレードにもよりますが、カー用品店などで交換依頼するのと自分で交換するのとでは、費用に大差がないですね。依頼してしまうのもアリかもしれませんね。

6-2. バッテリー交換(難易度:★★☆)

実施時期:走行距離80,000km時点
作業時間:30分
費用:7,000円

交換の判断基準

  • 前回交換:25,000km時(M42バッテリー)
  • 使用期間:約4年(走行距離55,000km)
  • 兆候:エンジン始動時のセルモーター回転が弱い、電圧計で12.3V(やや低い)

使用バッテリー

BOSCH (ボッシュ) HT-M-60/60B20L
Hightec JIS EFB アイドリングストップ車・充電制御車・標準車対応
M42からM60にグレードアップ

作業手順(概要)

  1. マイナス端子を先に外す(ショート防止)
  2. プラス端子を外す
  3. 固定金具(ステー)を外す
  4. 古いバッテリーを取り出す(重いので注意。油断すると腰を痛めます。)
  5. 新しいバッテリーを設置
  6. 固定金具で固定
  7. プラス端子を先に接続(取り外しの逆の順序で戻す)
  8. マイナス端子を接続
  9. エンジンをかけて動作確認
取り外す前の古いバッテリー
取り外し前
取り外したバッテリー
新しいバッテリー
新しいバッテリー
取り替えた新しいバッテリー
交換後
バッテリーをプラスから取り外すとショートする理屈を解説したイラスト
Teacher X
Teacher X

バッテリー交換は「外すときはマイナスから、つなぐときはプラスから」が鉄則です。逆にするとショートの危険があります。また、カーナビの設定データなどを初期化しないために、交換する前にメモリーバックアップを実行する方が好ましいです。

praxis
praxis

取り外したバッテリーはカー用品店などで処分依頼できます。私はお世話になっているお店に無料で引き取っていただきました。お近くのお店にご相談ください。

プロ依頼との比較

依頼先費用節約額
ディーラー約15,000円(工賃込み)8,000円
カー用品店約10,000円(工賃込み)3,000円
DIY7,000円(材料費のみ)

6-3. その他の補充・交換

クーラント液補充(難易度:★☆☆)

使用製品:古河薬品工業(KYK) ラクラククーラント-40C 2L 赤
費用:700円
作業:リザーバータンクのキャップを開けて補充するだけ

ウォッシャー液補充(難易度:★☆☆)

費用:約500円
作業:タンクに注ぐだけ

ワイパーゴム交換(難易度:★☆☆)

費用:約800円
作業:ワイパーブレードを立てて古いゴムを引き抜き、新しいゴムをブレードの溝に沿って差し込むだけ

タイヤ交換(1年前実施)(難易度:★★★☆)

使用タイヤ:ヤフオクで中古タイヤとホイールのセットを購入
「 ダイハツ純正14インチアルミホイール&155/65R14(夏タイヤ)4本セット 2024年製」
費用:14,000円(送料込み)
新品相場:約40,000円~
節約額:約26,000円

作業:タイヤ交換は初心者には難易度が高いため、詳細は別記事で紹介予定。ポイントはホイールナットの締め付けトルク管理です。

スパークプラグ交換(1年半前実施)(難易度:★★★☆)

スパークプラグは1年半前にイリジウムプラグへ交換済みでした。そのため、今回は点検のみで交換不要と判断しました。スパークプラグは約20,000~30,000kmごとの交換が推奨されます(イリジウムプラグの場合は75,000~100,000kmごと)。
※オイル交換同様に、軽自動車の場合は、普通自動車よりも回転数が高い傾向にあるため、スパークプラグ交換間隔も短い方が好ましいです。軽自動車の場合、イリジウムプラグの交換は、50,000km~75,000kmごとが推奨されます。

依頼先費用節約額
ディーラー約12,000円~(工賃込み)8,500円
カー用品店約7,000円~(工賃込み)3,500円
DIY3,500円(材料費のみ)
軽自動車(3気筒エンジンの場合)

第7章:コスト分析|DIYの経済効果

7-1. 初期投資(工具類)

工具名価格汎用性
ジャッキ&スタンド合計8,500円★★★
トルクレンチ3,500円★★★
エアコンプレッサー3,500円★★☆
オイルジョッキ+オイルフィルター用レンチ合計1,500円★★☆
プラグソケット500円★☆☆
その他工具
(クロスレンチ、コンビネーションレンチなどの買い足し)
合計2,500円★★★
合計約20,000円

7-2. ランニングコスト比較(5年間)

項目DIYプロ依頼節約額
オイル交換(年1回)約3,000円/年約5,000円/年2,000円
バッテリー(3年に1回)約2,300円/年約5,000円/年2,700円
タイヤ交換(5年に1回)約2,800円/年約8,000円/年5,200円
スパークプラグ交換(5年に1回)約700円/年2,400円/年1,700円
その他消耗品補充約2,000円約3,000円1,000円
年間合計約10,800円約23,400円12,600円
(約12,000円)

7-3. 投資回収期間

  • 初期投資:約20,000円
  • 年間節約:約12,000円
  • 回収期間:約1.5~2年

5年後の累積節約額:約60,000円 – 20,000円(初期投資)= 約40,000円のプラス

長期的な経済効果

工具は一度揃えれば長く使えます。10年間で考えると、約100,000円の節約になる計算です。これは軽自動車1台分の車検費用(2回分)に相当します。
※ユーザー車検で車検を通す場合は4回分相当。
【2025年最新版】軽自動車ユーザー車検マニュアル|知識・準備編~法改正対応!2ヶ月前受検と費用のリアル~

第8章:DIYメンテナンスで得られたもの

8-1. 技術的な成長

ブラックボックスからホワイトボックス化

何も知らなかった頃の私は「車のエンジンルームを開けるのも怖い」という状態でしたが、今では各部品の名前と役割が理解でき、異音や振動の原因をある程度推測できるようになりました。

  • 「キュルキュル音 → ベルトの緩み?」
  • 「ゴトゴト音 → 足回りの緩み?」
  • 「ブレーキの効きが甘い → パッド摩耗?液不足?」

このような「仮説を立てる力」が身につきました。

praxis
praxis

公道を走っていると、たまにキュルキュルと音を鳴らしながら走行している車に出くわしますが、恐ろしい気分になります。

8-2. 精神的な安心感

自分で状態を把握している安心

業者に任せっきりだと、「本当にちゃんと点検してくれたのか?」という不安が残ります。自分で確認すれば、「ここは問題なし」「ここは要注意」と明確に判断できます。

また、整備工場との対話もスムーズになりました。「ブレーキパッドの残量は7mmなので、次回車検前には交換が必要そうですね」と具体的に相談できます。

8-3. 身体の延長としての「車」:脳科学が証明する実感

メンテナンスを通じて、車が「ただの機械」から「身体の一部」のように感じられるようになりました。この感覚は、実は脳科学的にも裏付けられています。

【脳科学コラム】車が「脚」になる瞬間

神経科学の研究により、道具を使用すると脳内の「身体図式(Body Schema)」が更新され、道具を身体の一部として認識することが明らかになっています。

特に運転においては、日本の研究(Journal of Signal Processing, 2015)で「車幅の感覚は身体図式の拡張そのもの(the feeling of the car width is an extension of the BS itself)」と科学的に証明されており、運転中は脳の下頭頂小葉が活性化することが確認されています。

これは、義肢を使用する際と同じメカニズムです。神経が物理的に繋がっていなくても、脳は車を「自分の脚」として機能させているのです。

参考文献:
・Cardinali, L., et al. (2009). “Tool-use induces morphological updating of the body schema.” Current Biology.
・Maravita, A., & Iriki, A. (2004). “Tools for the body (schema).” Trends in Cognitive Sciences.
・”Biosignal Detection of Expansion of Body Schema Induced by TENS during Driving” (Journal of Signal Processing, 2015)

メンテナンスを通じて車の仕組みを理解することは、まさに「自分の脚を理解する」行為そのものなのです。

8-4. 挑戦してわかった限界

DIYメンテナンスを続けてわかったのは、「すべてを自分でやる必要はない」ということです。

難しかった作業ランキング

  1. ブレーキパッドの正確な測定
    差分法での測定には限界があり、正確性に不安が残る
  2. サイドスリップ・ブレーキ・排ガス・光軸・スピードメーターなどの項目
    簡易測定では不安、正確な測定には専用テスターが必要
    テスター屋に依頼すべき
  3. 足回りの詳細点検
    ガタつきの判断など、経験が必要

プロに依頼する予定の項目

  • ブレーキフルードの交換
    二人作業が必要(エア抜き作業)、一人では困難
  • 後輪ドラムブレーキの詳細確認
    ドラムを外す必要があり、専門的な調整が必要
  • サスペンション関連の総合診断
    ブッシュの劣化など、目視では確認が難しいものも含めて判断
  • サイドスリップ・ブレーキ・排ガス・光軸・スピードメーターなどの項目
    専用機器が必要

第9章:【重要】DIYとプロのバランス

DIYメンテナンスを実践して痛感したのは、「適材適所」の重要性です。すべてを自分でやろうとするのは、かえって危険です。

9-1. 私が決めた役割分担

項目DIYプロ
日常点検◎ 自分
液類補充◎ 自分
オイル交換◎ 自分
バッテリー交換◎ 自分
タイヤ交換○ 自分(慣れれば)△ 初回はプロ
プラグ交換○ 自分(慣れれば)△ 初回はプロ
ブレーキ関連△確認できる範囲は自分◎ 詳細はプロ
定期点検(1年・2年)△確認できる範囲は自分◎ 詳細はプロ
足回り・サスペンション△ 確認できる範囲は自分◎ 詳細はプロ
電子制御系診断◎ 必ずプロ

9-2. プロの技術への敬意

DIYを始めて、プロの整備士の技術の高さを改めて実感しました。

  • 微妙なガタつきを触覚で判断する技術
  • 異音から原因を推測する経験
  • 複雑な電子制御系の診断
  • 安全に関わる作業の確実性

これらは、何年もの経験と専門知識があってこそです。DIYメンテナンスは、プロの仕事を代替するものではなく、補完するものだと理解しました。

Teacher X
Teacher X

DIYの本当の価値は、プロの整備士と対等な対話ができるようになることです。「何となく任せる」のではなく、「この部分はどうですか?」と具体的に相談できる関係が理想です。

まとめ:DIYメンテナンスは「手段」であり「目的」ではない

ユーザー車検前の定期点検を自分で実施した結果、多くのことを学びました。

この記事のポイント

  1. 初期投資約20,000円で、年間約12,000円の節約
    1.5~2年で投資回収、10年で約100,000円のプラス
  2. 車の仕組みがブラックボックスからホワイトボックスに
    異音やトラブルの原因を推測できるようになる
  3. 身体の延長としての車を実感
    脳科学的にも証明された「車は脚」という感覚
  4. 自分でできる範囲を見極める
    安全に関わる部分は必ずプロに依頼
  5. プロの技術への敬意
    DIYは補完であり、代替ではない
praxis
praxis

DIYメンテナンスの目的は、費用を節約することだけではありません。車との対話を楽しみ、安全に乗り続けること。それこそが本当の価値だと実感しました。

次回は、この事前点検を経て臨んだユーザー車検当日の実践レポートをお届けします。検査ラインでの実際の流れ、不合格になった項目(もしあれば)、テスター屋での調整など、リアルな体験をすべて公開予定です。

参考文献・外部リソース

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カーメンテナンスや修理、DIY塗装の基礎となる知識をさらに深めたい方は、以下の記事もぜひご覧ください:

付録:使用材料・工具の完全リスト

消耗品

品名価格備考
モリグリーン エンジンオイル 0W20 3L2,500円
オイルフィルター(アストロプロダクツ)500円
BOSCH バッテリー HT-M-60/60B20L7,000円
DENSO イリジウムタフ ダイハツ ミライース LA300S 14.7~17.5用 VXUH20I 3本セット
3,500円
古河薬品工業 ラクラククーラント-40C 2L700円
ウォッシャー液約500円
エーモン LED非常信号灯 6904約600円

工具類

品名価格備考
Kaitou 油圧式ガレージジャッキ 2.5t約6,000円最低位85mm
Emerson ジャッキスタンド 3t 2個約2,500円6段階高さ調整
アクアドリーム トルクレンチ ATD-210約3,500円28~210N·m
AstroAI エアコンプレッサー 150PSI約3,500円シガーソケット接続タイプ
PIAA オイルフィルター用レンチ W65約1,000円トルクメーター付
プラグレンチ12角 3/8(9.5mm)差込角 約500円マグネット仕様 スパークプラグソケット プラグソケット
AZ オイルジョッキ 2L約500円フタ&こし網付
SK11 T型スライドソケットハンドル約1,000円差込角9.5mm

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